投稿者
  題名
  内容 入力補助画像・ファイル<IMG><OBJECT>タグが利用可能です。(詳細)
    
  ファイル1
  ファイル2
  ファイル3
アップロード可能な形式(各1MB以内):
画像(gif,png,jpg,bmp) 音楽(mmf,mld) 動画(amc,3gp,3g2)

 URL
[ ケータイで使う ] [ BBSティッカー ] [ 書込み通知 ] [ teacup.>詩 | 画像 ] [ 検索 ]

投稿募集! スレッド一覧

他のスレッドを探す  スレッド作成

全1038件の内、新着の記事から100件ずつ表示します。 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  |  《前のページ |  次のページ》 

春三月は 悲しかりけり

 投稿者:藤田勝久氏の詩を転載  投稿日:2011年 4月 4日(月)12時18分57秒
編集済
  春三月は 悲しかりけり


 16年前 春の三月に地下鉄にサリンが撒かれ
 多くの人々が 死んだり後遺症を受けた
 今年 20011年の春三月
 福島の原発が地震で 給水配管が損傷し送電鉄塔が倒壊し制御不能に陥った

 水位が低下し 燃料棒の溶融が始まった
 原発の所長は 本社に総員撤退を伝えた
 空を飛んできた首相は 撤退を許さず
 最後まで 死地を守れと命令した

 線量計の針は どんどん上がって行く
 台帳に5000台ある線量計は 320台しかなかった
 線量計は 改修作業者全員に渡らなかったと
 福島市内にある電力事務所は 31日そのことを発表した


 線量計は津波と地震で壊れたことにして 内規を変えた
 3月25日現在の 柏崎原発のホームページを見よ
 530台の線量計を 福島に送付したと書いてある
 何故に隣の第2原発から 取り寄せてないのだろうか

 線量計を渡せば 作業員はUターンだ
 作業なんか 出来っこない
 今は非常時なのだ
 戦争なのだ

 放射線障害防止法
 労働安全衛生法
 違反は承知だ
 内規を変えよ

 未必の故意だ
 殺人罪だ
 仕方がないが 本社も大本営も
 死守せよと 言ってるんだ

 6億かけて作った ロボット作業車は
 何処行ったのか
 メンテナンスが駄目で
 動かない

 19日 本社は労働組合と妥結した
 賞与年間支給額
 168万円で 妥結した
 組合員は 3万2千人だ

 保安院が 記者会見してる
 通産省の天下りと 出向者でないのか
 あの男は 何処かで見たなあ
 特許庁に いたような

 500人余の下請け孫請けが 殺されていく
 1000年に一度の 大津波だ
 4680台の線量計が 津波と地震で壊れたのだ
 我々は 命がけで戦っているのだ

 ほかの方策は 絶対にないのか
 すべては 空からの作戦に切り替えよう
 犠牲者を 少なくしよう
 ガダルカナルは 二度と見たくない

 水漬くかばね 草むすかばねは
 今 放射能にまみれて海と 陸にある
 これ以上犠牲者を増やさないでくれと
 彼らは言っているに違いない







        2011、4、1    藤田勝久

http://www.iam-t.jp/HIRAI/pageall.html

 

夜更けに過ぎ去る人

 投稿者:りらメール  投稿日:2011年 2月22日(火)21時53分47秒
  夜更けに過ぎ去る人は
ちいさな画面の向こうから
電波の通い路をくぐり抜けて訪れる
琥珀色のグラスの水滴に語りかけ
ひとつふたつ文字は星になり
銀河の唄を奏でている

「僕が死んだら北斗七星になるよ
 捨てられたものたちを掬っている」
呟いていたやわらかな虚無の夢
「わたしが死んだらカシオペアね
輪を描き北極星を守っていましょうか」
生きているから灯かりの点る死を希む

夜更けに過ぎ去る人よ
花占いをするように
ひとひらふたひら散らし
引き算するように数えていた
「会うことがあれば。遠い日にでも」
「かまわないよ。奇跡が起こればね」
幻のような約束にガラス瓶の蓋をする

聞いてみたいことを尋ねないのは
言ってみたいことを口にしないのは
幾千枚の花びらほど慕い
幾千枚の言霊を失って

満天の星空よりもひとつの星の光を
くすまぬように抱きしめて
ささやかなぬくもりを重ねていたいと

夜更けに過ぎ去る人よ
肩を抱きあった月明かりから
するりと抜けてここにはいない人
どこかで汗を流して生きている
足音もないのに
おやすみと足跡だけ残し
夜更けに過ぎ去るあなた





*******************
お久しぶりです。投稿させていただきます。
ペンネームは「水月りら」に変更しました。
よろしくお願いします。


 
    (M海月) 素晴らしい詩をありがとうございました。
返詩は1~2週間お待ちください。やや体調を崩しています。
 

故 中川路良和 詩作品より

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2011年 2月14日(月)23時11分17秒
編集済
   以下、私の友人である故中川路良和君の処女作品集でもある『頭變木』所収の全詩篇です。
 初対面より間もないころ、人には見せたことがないのだが、と中高生時代に書き溜めた作品をなぜかひそかに読ませてくれたとき、彼は十九歳でした。わずかに方言も混ざって、その素朴で繊細で素直に表現された少年の心に、思わず涙したことを覚えています。
 久しく行方不明になったままでしたが、数年前に発見されたとき、それは放浪の果ての路上死という哀しい姿であったと聞きました。
 鬱になりそうな心を振り絞って再読し、何とか他の作品も発見できないかと手を尽くしてはみたのですが、どうやらあきらめざるを得ないらしいことも、やっと分かってきました。
 彼の作品を多くの人に一読していただくことになれば、生前からこの全作品についての処遇を任されていた私にとっても幸甚ですし、もって彼の冥福を信ずる結果にもなろうかと思います。
 今ここに一つ一つ彼の詩句を打ち込みながら、このナイーフな思春期の心の吐露と繊細な表現は、ついに私には果たしえなかったものであったし、ますます遠くなるばかりの昨今だなあと思うにつけても、私の中での輝きは増していくようです。









 Ⅰ 黙失


窓べのそばの大きなこずえの満ちたる葉のあいさから

白い花が
名も知らぬ花が散ってゆく


うつり変りの広い空間の果てに
あてもない淋しさを誰が知っているだろうか
幸福をどれほど求めていたか
どれほど愛を得たかったか
苦しみをどんな気持でおくってきたか

人は何を知っているだろう

僕は人にはたえられなかったことを
ただたえられなかったという
それだけであったろうか


夏の夕ぐれ
白い名も知らぬ花は
かすれたようなもつれたような音をたてて
散ってゆく







     Ⅱ 雨の


雨の降ったあとの
静かな空間には
深い人生が
チロチロと流れてゆく
去ってゆくものへの憂えの心が
雑草の水粒に目をやる

飲みのこした
水粒のついたグラスをすかして
目の前の 生きている人間を見ると
ボッーとかすんで
泣いているかと自分を思ったりする
グラスについた水粒は重く流れてゆく

きのうは雨が降った
今日も降るといい
今のうち降っておくとよい
そのうちやんでしまうのだから
自分も幼いとき
もっと心の雨を降らすべきだった
今じゃ
もう泣けないものだから

去ってゆくものへの憂いが
くすぶってくらい夜を
みつめさせる
泣けたらどんなにいいだろう
雨よ霧のように流れてふってこい
雨の降ってくるまえは
何が起こるかわからなくて
不安でしかたがないのだ

雨の降ったあとの
静かな夕方には
ある一人の人生が
チロチロと流れてゆく
今すぎようとしている
「時」を
わけもなくみつめている






     Ⅲ 寒い風が


異国のゴルゴダの丘から

寒い 寒い風が吹く

暗い夜の下で 一人

泣くことも

失なわれ

川の上に無常の影さえも

消えてゆく

一人

「人間」と名のつく者が

闇をたよりに泣くかもしれない

淋しい小道を歩きつづけ

夜汽車の通るふみきりに

凍てついたクルスを胸におしあて

うしろに点滅する光をふりかえる








     Ⅳ 雨に向って


霧のようにこまやかな刻が
さめざめと
降りつづく

うずもれて鉛色に重い空には
冷たい心は
もう宿ってはいない

木々の枝は
ぬれて自分でも気づかぬ内に
頭をもたげている
さめざめとした刻がいつしか路上に一すじ
悲しい声で流れてゆく

人は思い出したように
マネキンを一瞬ながめては
溜息をついて歩いてゆく

マネキンは何かいいたげだ
このさめざめとした
雨に向って








      Ⅴ 春のあつい日


春のあつい日
古い西洋館のへいを
歩いていると
ふと 自分の足音に気づいた

その漠とした時の流れ

(どうしてこんな大事なものを忘れていたのだろうか)

ぼうぼうとした野の原に
はえそめた緑の草をちぎると

サラ サラと時をこえて
砂つぶが風に吹かれてゆく

その緑の悲しみ

僕は青色い空間に
やすらぎを求めようとしたのか

赤いレンガのへいに
もたれながら


その漠とした時の流れ










.
 
    (M海月) 彼の最高傑作である、長い一遍の詩が不明のままです。
同じ大学の国文科卒の酒向都代子さんという心優しい方が所持なさっているらしい、ということまでは分かっているので、何とか連絡してお頼みしたいと思っているのですが、彼女の所在も不明で連絡できません。
もしご存知の方がいらっしゃって、この掲示板末尾の「管理者へメール」で当方に伝えていただくのが無理なら、ぜひ彼女にこれを読んでいただけるよう伝える等していただければ、中川路君の姉上ともども、喜びにたえません。
よろしくお願いいたします。

 

ひとつの島

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年11月24日(水)08時44分46秒
                                .


青い大海原に浮かぶ
ひとつの島であることは さびしい

 酷暑の夏も 厳寒の冬も
 狂瀾怒涛の嵐のさなか
 雷鳴と大波に打たれ大風に曝されても 独り

 降りやまぬ雨の中でも 立ち込める濃霧の中でも
 月も星も見えぬ 深い深い闇の中でも 独り

 秋の空を渡り鳥たちが 彼方に向かって飛び去っていくときも
 雪が降りしきり みわたすかぎりの暗い海面に
 音もなく ただただ 消え続けてゆく…
 その雪の中にも 独り 残されて


けれども 最もつらく さびしいのは

 茜色の夕焼けが大空と海面を彩るとき
 澄み渡った夜空を 片雲が流れ
 月と星たちが煌めきながら 久遠の水晶球を廻っていくとき
 すみれ色の空間に星たちの輝きは薄れ 曙がはじまるとき
 ささやかな花畑に色とりどりの花が咲き乱れるとき
 小さな木々や草たちが新緑に萌えるとき
 初夏の光を浴びて 魚たちが銀色の飛沫を上げて 戯れるとき…

このかけがえのない美しさを ほかの誰が わかってくれるだろうか


そのとき 香しい雨のように
やさしい光天使の声が 降りてきた

 深い海の底に 君の秘密がある
 君は 独り浮かぶ存在ではなく
 大地につながっている

 草や木が しげみの陰の小さな白い動物が
 海藻に 卵を産みつける魚たち 貝や蟹
 数知れぬ小さな生き物たちが
 君のなかに生きている

 だから
 「 ちいさな島でいることは すばらしい
   世界につながりながら
   じぶんの世界をもち
   かがやくあおい海に かこまれて 」




幾たびも季節がすぎ
ある日 くじら が通りかかった
島は ことづけを 頼んだ

 もし ひろい大海原で
 孤独に 震えている
 ちいさな島を見かけたら
 こう伝えてほしい
 「 ひとつのちいさな島でいることは すばらしい
   なぜなら ………              」


くじら は ワカッタ とでもいうように
大きなひれをあげて ゆっくりと波間をたたくと
悠然と 水平線の彼方に 姿を消していった





(最初の「  」の部分はG・マクドナルドの『ちいさな島』<谷川俊太郎訳>から、そのまま引用しています。)
 
    (M海月) 詩人stanさん、ご投稿ありがとうございます。たびたび訪れていただければ、うれしいです。  

 投稿者:詩人stan  投稿日:2010年11月23日(火)13時36分47秒
  そのまま誤解したままでいなさい

それが私の
人に対する愛情だ。

http://x55.peps.jp/stanoo
 

オパール

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年11月19日(金)10時08分54秒
                                        .



まるで見通せない
乳白色の霧の中
時折 虹色の燦きが


不安定な夢の充実感
あれは幸福なひと時だったのか
すぐ近くに 君がいたのを
知りもしないで…


オパールの中
白い褥に 君を抱き寄せたら
もう一度 あのやさしい空間に
戻れるだろうか


雪の降りしきる黄昏
君に傘を差し伸べられないまま
すれ違った 哀れな罪を
今度こそ 償えるだろうか


自分の小ささに
涙したあの日も
背中合わせに
いつも白く
君はいたのだね


オパール
天から降りしきる雪
空に向かって点々と続く
あの足跡さえ消して
なにも見通せず
なにも持てなかった
日々の白い闇





.
 

栗の実

 投稿者:帆かけ  投稿日:2010年11月18日(木)13時46分8秒
  この雨足は西からの便り
しとど、しとどと雨は降る
かあさんの
お墓の下に横たわる
石ころだらけの畑から
枝を拡げた栗の木が
生き物みたいに根を下ろし
母の骨から滲み出た
髄液みたいな液体を
じわり、と吸って
あおくかがやく
イガの実を
たわわ、たわわに付けていた
わたしはおもわず声を上げ
お椀の形に手を受けて
かあさんの栗の実探したけれど
どこにも落ちていなかった

行方不明の栗の実を
(あのひとが)
宅配にして届けてくれた
拾えなかった栗の実を

ひと夜ひと夜の雨ごとに
ポトリ、と落ちては地面に溜まり
又土くれに還る実の
なかに生まれたいのちの種を
ただわたしに食べさせようと
わざわざ送ってくれたのです
(がさつくその手で紐を縛って)

つややかで滑らかな
きれいな肌の表面を
水で洗って揉んでみる
両手のひらにちくちくと
栗の尻尾がつん、と立ち
かあさんの事おもいだす
いつまでも、いつまでも終わらない
母の繰り言。
落ち葉みたいに敷き詰められて
シンクいっぱい零れ出し
栗の実、栗の実、ごろごろと
とたんに秋は溢れ出す

  *

あのひとが
母の命を拾いました
ひとつひとつ丁寧に
乾いた足で棘に刺されて
踏んだなかから拾いました
錆びたその手で
古びた紙にそれらを包んで

吹きすさぶ木枯らしの
冬が一面
そらに被さるそのまえに




  * まどろむ海月さん、先日はありがとうございました。
    やっと書けたので、投稿させて貰いますね。 ほんとうに感謝しております ~~*
 

月の浜辺の釦(ボタン)

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年11月 6日(土)10時25分52秒
編集済
                                .



月夜の浜辺で 釦を拾った少年は

釦の穴から 海を見て
釦の穴から 月を見て
釦の穴から 星空を見た

きらきら光る 波間には
宇宙のすべてがあるようで

すべての宇宙を含んだ釦を
舌に乗せ ぶ~ん
うれしいな  手を広げて
ぼくは宇宙飛行機だ



浜辺の砂には 柱時計が埋もれてる
ぼ~ん ぼ~ん
波は ひたひた…

 今夜は深く眠れそう




  ねえ
  その浜辺に 二人で行こうよ
  今夜は月が綺麗だもの
  君の影は いつものように
  笑いながら ふざければいいや
  兎だの 梟だのに 変身して


 お礼に 今夜は ぼくが
 だいじな だいじなものを あげる



 月夜にひろった釦だよ




               .
 

わたしの

 投稿者:帆かけ  投稿日:2010年11月 4日(木)10時49分29秒
編集済
    わたしの花は もりになり
  わたしの波は うみになる

  わたしの月は 引力を起こし
  満ち潮を作り 波を起こして
  引き潮の夜に 苦しみをしる
  そうして君は ひとになる

  ひとになる  ひとになる

  ひとになる





 まどろむ海月さん、
 いま、帆かけのなかでいちばん好きな詩です。
 読んで頂けたらとても嬉しく思います。
 
    (M海月) ご投稿ありがとうございました。素敵な詩で,うっとりします。
公私共に,あまりに多忙で,疲れ果てています。返詩は、しばらくお待ちくださいますように。
 

ふたつの みっつの、あるいは

 投稿者:野の花ほかけメール  投稿日:2010年 8月30日(月)00時48分25秒
編集済
  愛するとは何でしょう
愛することと愛されることと 一体どちらが幸せなのでしょう

ここにひとつの物語があります
其の話しはふたつのストーリーが合わさってできているひとつの物語です
それぞれの話にはそれぞれの物語が
富貴な人間の不幸せな愛情と 貧しく何も持たない者の切ない恋

しあわせって何なのでしょう
愛情があれば幸せ お金があるから幸せ
それとも・・・
どちらもそれぞれにしあわせで
どちらもそれぞれにふしあわせと言えるかもしれません

しあわせってなんでしょう

生きていればしあわせ
死んでしまったらふしあわせ
他人のうわさ話に戸を立てることはできません
世間とはそのようなものなのでしょう
しあわせは手に取ることも 形にすることもできません
それはそれぞれの心の中にだけ存在するものなのですから
猫の瞳の色が違うのは
案外そのような理由がそこにあるからなのかもしれません

この猫は目の色が違うことで
同種族では忌み嫌われてしまったかもしれませんし
そのことが理由で同族と仲間にはなれなかったかもしれませんが
それ故に画家にこれほどまでに愛されたのかもしれません
そのように考えていくと 人の幸不幸は
かなり相対的なものであるかもしれないのです

 *


さて、ここにもう一つの物語がありました
ひとつの猫の話しをとても大事にしている詩人と
ひとりの絵本作家とのものがたりです
絵本作家が秘めた情熱を込めて書いた絵のかずかずと
それを贈られた詩人
この中にはいったいどんなストーリーが秘められているのでしょうか

どのようなストーリーであっても
このような美しい物語とそれにぴったりの美しい愛情の込められた挿絵
この第三の物語を不幸せというひとは
そう多くはいないでしょう
きっとふたりはそれぞれに
それぞれのしあわせを感じていることでしょう

そういうストーリーがこの世にあってもいいのではないでしょうか
それほどまでに幸せを感じることの少ない世の中であるのですから

そのようなことを考え第三のストーリーのハッピーエンドを願いながら
その一冊の絵本を閉じて わたしは
第四の話しを続けていくことに致しましょう

その話しがはたして幸せなのか 不幸せなのか知る由もありませんが
それを続けていくことで 少しは幸せに あるいは不幸せに近づくのかもしれません
あるいはある日突然に生きることの尊さを知るのかもしれません
そんな明日を願って わたしは今日の眠りに着きましょう

おやすみなさい まどろむ海月さん
世界にたったひとつしかない素敵な物語をありがとう
 
    (M海月) ほかけさん、ありがとうございました。こんなに長いものを読んでいただくだけでうれしいですのに、さらにうれしいコメントをいただきました。
読ませていただいて、絵描きのほうもとても喜んでいるようです。
 

猫たちの肖像画1(表紙)

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)02時54分9秒
                      .


.
 
    (M海月) 私がもっとも大切にしているメルヘン「猫たちの肖像画」に、少女画家の彩也香・Mさんがすばらしい絵をつけ、世界にたった一つしかない手作りの絵本としてプレゼントしてくださいました。以下~24まで、ぜひご覧ください。
市販の小さな白い本に絵を描きいれつつ、手書きの文字も書き込んでいくため、修正できない一回性というとんでもない困難な方法でこの絵本は作られています。
どれだけ多くのアイデアのための下描きや練習、ちょっとしたミスも許さない細心の注意や、最初からのやり直し・作り直しの果てに、最終的にはまるでフィギアスケートの本番の演技のような緊張感のある配慮を長期に持続させて、これは仕上げられています。
身も心もすり減らす日々の果てに、笑顔の彼女は私に手渡してくれたのでした。
画像処理の制限等から、彼女の絶妙な描写や感性が1/10も伝わらないのはすごく残念です。
 

猫たちの肖像画2(中表紙)

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)02時51分36秒
編集済
                           .

   二人の人間が死ぬと、一匹の猫が生まれる。だから
       猫の目は 時々 左右 色が違う




     文=まどろむ海月   絵=彩也香・M


               .
 

猫たちの肖像画3

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)02時38分6秒
編集済
                     .


 昔、ある国に「世界一美しい王子」がいました。彼は「世界一幸福
な王子」とも呼ばれていました。なぜなら、美しいばかりでなく、あ
らゆる才能に秀でて、武芸でもスポーツでも、彼にかなうものはあり
ませんでした。また、隣の国には、「世界一美しい王女」が住んでい
ました。彼女は「世界一幸福な王女」とも呼ばれていました。なぜな
ら、美しいばかりでなく、あらゆる学芸に秀でて、どんな才能でも彼
女より勝れた女性はありませんでしたから。王女にふさわしい配偶者
は、この王子以外には考えられず、王子にふさわしい配偶者は、また、
この王女以外には考えられない、と全ての人がそう思っていました。



.
 

猫たちの肖像画4

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)02時34分35秒
編集済
                       .


 事実またそのとおり、二人は出会ったときから互いを好きになり、
めでたく結婚することになり、二つの国は一つに統合されることにな
りました。もちろんその陰には、利害得失を異にする人々の間での少
なからぬ困難や諍い抵抗などなどといった少しも愉快でない話も実は
たくさんあったのですが、賢いお二人や両王両后たちはそれらを全て
軽くのり越えていきましたし、なによりこの幸福な結婚に酔いしれる
人々の圧倒的な気分に支えられ、それらは聞くにたえないささいなつ
まらないエピソードのいくつかとしてまもなくすべて忘れられていき
ました。


.
 

猫たちの肖像画5

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)02時32分24秒
編集済
                    .



 人々はこの結婚を「世界一幸福な結婚」と言いはやしました。
 二人の結婚は国中の人々の祝福するところとなり、国を挙げての祝
宴は考えられる限りのあらゆる贅を尽くした盛大なものでした。




.
 

猫たちの肖像画6

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)02時28分16秒
編集済
                               .


 この「世界一幸福な結婚」を、永久に記念するために、当時これま
た世界一と謂われていた偉大な宮廷画家が幸福な二人の肖像画を描く
よう命ぜられました。腕に自信のある画家は、この誉れ高い仕事を喜
びいさんで引受けましたが、仕事は思ったよりはるかに困難でした。



.
 

猫たちの肖像画7

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)02時24分0秒
編集済
                          .

 彼の持つ技術の粋を尽くして、「世界一幸福な二人」を題としてあら
ゆる絵が試みられましたが、どんなに描いても、この画家の自尊心を
満足させるような作品は、遂にできませんでした。
「世界一幸福な絵」は、一年経っても二年経っても、日の目を見るこ
とは遂にありませんでした。
 責任感強い画家は精神的衰弱を訴え、宮廷画家の名誉ある地位を自ら
辞することになりました。
 彼の不幸な絶望は、彼のあらゆる自信を奪い、遂には彼から絵を描く
気分そのもの奪う結果となりました。
 こうして一人の不幸な画家が生まれました。


.
 

猫たちの肖像画8

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)02時18分58秒
編集済
                                .


 さて、ここにもう一人、不幸な若い画家がおりました。絵を描く以
外には何の能力も才能もない青年でした。しかし絵を描く才能といっ
ても疑わしいもので、実は彼には猫の絵しか描けなかったのです。人
が良く気弱な彼に同情して、たまに絵の注文をしてくれるお客がいて
も、花の絵を描けという注文に対しても、彼はやはり猫の絵しか描く
ことができないのでした。彼にとってその猫こそ「花」でした。しか
しお客にとってそれはもちろん「猫の絵」でしかありませんでした。
美しい山を描けという注文もありました。彼はまた一生懸命猫の絵を
描きました。彼にとってその猫こそ「美しい山」でした。ところがそ
のお客にとってもそれはやはり「猫の絵」でしかありません。
 若者は親の遺してくれたわずかな財産を食いつぶすばかりで、乞食
のように貧しい生活をするほかありませんでした。


.
 

猫たちの肖像画9

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)02時16分12秒
                             .



 画家の住む貧しいアパートの向かいのアパートの3階に、画家がひ
そかに恋いこがれている少女が住んでいました。別に美しい女性とい
うわけでなく、どちらかといえば目立たない、しかも病のため戸外に
一歩もでることのできない少女でした。このほとんどひとめを引くこ
とのない彼女をかいま見ては、画家は切ない恋を感じておりましたが、
自分のあらゆる才能に絶望していた彼には、愛する人を幸福にする自
信などとうていなくて、愛すれば愛するほど『あの人をあきらめなく
ては…』という不幸な決意をかためるばかりでした。


.
 

猫たちの肖像画10

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)02時13分35秒
編集済
                           .


 実は少女の方もこの若い画家に恋いこがれておりました。毎日むな
しく見下ろす窓辺からふと目を見合わせたこの青年に、その日から彼
女も切ない恋を抱くようになったのです。しかし内気な彼女も気弱な
若者と同じ決意をかためていました。というのも、彼女自身不治の病
にかかっており、自分がまもなく死ななければならないのを承知して
いたからです。

 こうして二人は、かたい表情の中に切ない思いを秘めたまま、互い
の片恋を知ることはありませんでした。


.
 

猫たちの肖像画11

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)02時10分36秒
編集済
                          .

 貧しさと失意の中でやがて画家は死にました。

 一枚の美しい黒猫の絵が残されていました。若者にとっては恋いこ
がれた少女の姿そのものでした。そして遺されたメモから、若い隣人
からのプレゼントとしてその絵は少女のもとに届けられました。少女
はその絵を見て、激しい悲しみのうちにあらゆる事をさとりました。
その一瞬、彼の絵の初めてのそして真の理解者となった少女にとって、
その絵は青年の純粋な愛そのものでした。

 そして激しい至福の歓喜と悲しみの焔(ほむら)の中に、彼女にわ
ずかに残された生命のすべてのエネルギーが燃え尽きました。ことき
れていく彼女には、その絵こそ若者そのものでした。


.
 

猫たちの肖像画12

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)02時07分27秒
編集済
                        .



 葬儀が済んで、主のいなくなった少女の部屋に、人々は世にも美し
い黒猫と、一枚のふしぎな白いキャンバスを発見しました。





.
 

猫たちの肖像画13

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)02時05分10秒
編集済
                       .

 この世界一美しいかと思われる黒い猫は、めぐりめぐってあの「世
界一幸福な」王子と王女のもとへ献上されることになりました。

 そして不思議な魅力を秘めた奇妙な白いキャンバスは、めぐりめぐ
ってやはり世界一偉大だといわれた画家の手にするところとなりまし
た。その白いキャンバスに、失われたはずの激しい創作意欲をかきた
てられて、画家は不思議の感に打たれましたが、まだ彼には、どんな
絵が描かれるべきなのかはわかりませんでした。



.
 

猫たちの肖像画14

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)02時01分52秒
編集済
                             .

 「世界一幸福な二人」と言いはやされていた王子と王女、しかし二
人はちっとも幸福なんかではありませんでした。いくら求め合っても、
与えあっているつもりでも、愛も幸福も、実感として深く感じられる
ものがまるでないのでした。
 そして文字通り愛の結晶とも言える子供は、不思議にも皮肉なこと
に二人の間にはどうしても生まれないのでした。誰が見ても仲むつま
じく幸福な夫婦でした。たがいに相手をやさしく気づかうことにおい
ても、人並み優れた二人でした。こうした二人に、例の猫がうやうや
しく献上されたとき、二人は思わず喜びの声をあげました。それほど
美しい魅惑的な猫だったのです。これこそ彼らが求めてやまなかった
もの、そのもののような気さえしました。
 美しい猫は、二人の子供のように、二人の愛情を一身に受けること
になりました。


.
 

猫たちの肖像画15

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)01時58分26秒
                       .

 奇妙な生活が始まりました。これは二人にしかわからないことでし
たが、王子には王女よりも、王女には王子よりも、この猫の方を本当
に愛せるのではないかという気がしていたのです。やさしい二人は仲
むつまじく暮らしておりました。王子は王女に、愛しているよと言い
ました。なぜかそばにいる猫が笑ったような気がしました。王女は王
子に、私たちは世界一幸せねと言いました。すると猫が尾で?を作っ
たような気がしました。
 二人はいだき合いながら、心のどこかでため息をついているのでし
た。二人は激しくいだき合いながら、一匹の猫より孤独を感じていま
した。王女は夫の姿が見えないあいだ、猫を膝の上に抱きながら「愛
って何かしら。」とつぶやいてはため息をつきました。王子は妻の姿
が見えないあいだ、猫を膝の上に抱き「幸福ってなんだろう。」とつ
ぶやいてはため息をつきました。


.
 

猫たちの肖像画16

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)01時54分56秒
                      .


 深い霧がたちこめたある朝、王子と王女は庭で軽い食事をとってお
りました。

 王子が突然、音をたててナイフとフォークを皿の上に落しました。
彼は、自分たちこそ世界で一番みじめで不幸な存在ではないかという、
それまでの人生のすべてを根底から覆すような一瞬の激しい心の痛み
に貫かれ、小さな叫びをあげ、そのままこときれました。

 壮大で悲痛な葬儀のあと、王子の死の原因と心の秘密を知るものは、
聡明な王女だけでした。

 王女もまた、自分たちの不幸を嘆きみるみる衰弱して、わずか数週
間の後に命の炎を消しました。

 国中がかってない深い深い悲しみの淵に沈みました。

.
 

猫たちの肖像画17

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)01時50分14秒
                       .


 二人が亡くなってまもなく、世にも美しい一匹の白い猫が姿を現し
ました。

 こうしてお城で仲よくたわむれる二匹の美猫は、やがて二人の死を
悼む人々によって、まさに二人の生まれかわりのように愛され、大事
に養われることになったのです。



.
 

猫たちの肖像画18

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)01時45分12秒
編集済
                          .


 さて画家の話。絵筆をとらなくなってから久しいあの偉大な画家は、
誰に会うことなく例の白いキャンバスに向きあったまま、むなしく日
々を過ごしておりました。
 ある日こんな画家の耳にも、彼の絵筆を奪うきっかけとなった例の
「世界一幸福な」王子と王女が亡くなったというニュースが伝わって
きました。同時に不思議な黒い猫と白い猫の話も。そしてその話を聞
いたとき、突然画家は何を描くべきかをさとりました。



.
 

猫たちの肖像画19

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)01時42分43秒
編集済
                        .



 長いあいだにらみ続けてきた白いキャンバスに、画家ははげしい勢
いで絵を描きはじめました。



.
 

猫たちの肖像画20

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)01時40分33秒
編集済
                        .


 出来上がったのは、何とも幸せそうな二匹の猫と何匹もの可愛らし
い子猫たちの、家族の肖像でした。



.
 

猫たちの肖像画21

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)01時38分18秒
                    .


 すっかり年をとった一人の画家が、一匹のシャム猫を飼っていまし
た。毛なみは美しいグレーで、目の色は緑色でしたが、その青さの感
じが左右でいくらか違っていました。画家は猫を抱きあげるとその目
を覗き込むようにしては、誰に言うともなくこんなことをつぶやくの
でした。



.
 

猫たちの肖像画22

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)01時27分51秒
編集済
                             .


「いいかな、いちばん大切なのは富でも地位でもない。
愛じゃよ、わかっておるかの。
おまえさんの目はいつも深い湖水のようじゃて。
やっぱり左右でいくらか色が違うのう。
湖水の底に小さな明かりがちろちろ燃えている気がする。
これは焚火かな。
焚火に向かいあって座っているように見えるのは若い男女かな。
・・・ ほほう、見つめあっとる。
・・ 微笑みあっとる。
わしゃあ、目がおかしいのかな。
幻かな。」
                     .

画家は猫を床に降ろすと腕組みをした。
「・・わしももうろくしたかな。
まあ人生は夢みたいなもんじゃが・・・。」


.
 

猫たちの肖像画23

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)01時25分3秒
                         .


猫は背を向けてあるきだすと、
尾で?を作りながら、
ゆっくりと部屋の隅の闇の中に消えていきました。


.
 

猫たちの肖像画(裏表紙絵)

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月29日(日)01時19分43秒
編集済
                            .




                .





.
 
    (M海月) 私は、本当に幸せ者です。
さやかさんには、原作を手渡しただけだったのですが、読解と解釈の的確さ・深さ(例えば子猫のたちの中にちゃんと最後の場面のシャム猫が描かれていることや、本人たちが気付かなかった互いの愛と幸福に、猫になった後初めて王子と王女も気づいて結ばれていることなど)の上にあの絵の出来栄えで創作されているだけでも驚嘆します。
ため息が出るほどの好みの絵は、6・7・12・19ですが、彼女独自のアイデアのすばらしさに脱帽したのは、10・11・13・17・20・24です。原画のすばらしさをもう少し再現できるよう、http://www12.plala.or.jp/abon/page005.html にアップしました。ここ「昼も夜も 星空の下」では、絵は文の後にしか入れられない等かなりいろいろな制約があるのですが、そちらのHPのほうはかなりうまくいきました。ぜひご覧ください。
これほど手間ひまかけ心を込めた、どんな宝石より尊い贈り物に値する作品であったか、私であったか、恥ずかしくなるほどですが、受け止めきれないほどの至福を味合わせていただきました。
さやかさん、本当にありがとう。
 

夏の楽譜Ⅱ

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月17日(火)14時52分11秒
編集済
                           .


炎の涙が昇華し
散りばめられた光彩の
上空を切る送電線の名は
一瞬に置き去りにされる

はなやぎの漣が広がり
煙の巨人は叫ぶが
底知れぬ闇は隠された

消えては映る木霊と
思い出の紫陽花を浮かべて
やがてすべてが銀河とともに
退いていく



 遠い夜の街の哀しみに
 流れ落ちてやまない星
 願いは燃えても沈黙は深まり
 海月と海星は寄り添うがそれは
 地平の彼方の儚い出来事

 存在を隔てる罪と罪の狭間は
 僥倖たる生を無意味化し
 林檎は手からこぼれ天使は
 全能者の御許に去っていった
 ええ あのひとは
 もどってはこない
 もう…





ねえ
星影の湿ったところから
薄明は抜け出したよ
風に腰掛けていた夜明けは
川上に揺れる微笑を流している
大気の重力から解き放たれて



心を支えつづけた友の
顔さえ見ずに歳月は過ぎ
生死の境のあいまいな関係に
朝は久しくまどろんだまま
そびえ立つ波のすべてを
受けとめている





                       .
 
    (M海月) りらさん、ほかけさん、多次元梟さんへ。返詩です。  

華しぐれ―隅田の花火―

 投稿者:りらメール  投稿日:2010年 8月14日(土)21時40分25秒
  打ち上げ花火
乱舞する光彩
咲いて消えて
水面に映る華
燃え滾る漣に
あの人の名を
呼ぶ一輪ごと


炎の花びらは
落涙のように
川面に消えて
置き去りの空
夜風に揺れて
煙を羽織る闇


胸打つ轟音に
木霊していた
雨に打たれて
迸る雫を背に
とどけられた
あの人の言葉
しろい文字を
返信していた


遠退いていく
思い出花火に
濡れた星の夢
ひとところに
群れて花咲く
小さな天の河


還らぬあの人
に贈っていた
今も好きよと
花火のような
星の紫陽花を





☆まどろむ海月さんへ
 この作品をお読みいただき、ありがとうございました。最近、多忙なのと体調低下(パソコンの文字を読んでいると疲労する)のため、現フォから遠ざかっています。詩作も寡作になりがちですが、ゆっくりペースでボチボチ書いていこうと思っています。何よりも、自分が納得した作品を創作することを大切に、と思っています(自己満足だけになるかもしれないのですが、自己満足もできなければ創作を楽しめないような気もしまして)
 写真は、「隅田の花火」と名づけられた珍しいタイプの紫陽花です。隅田川の花火と似ていることから名づけられたそうです。
 いつも気にかけていただいていることが、ほんとうにうれしく思っています。心よりお礼申し上げます。
 
    (M海月) 久しぶりにあなたの詩が読めて、本当にうれしいです。詩も写真も、らしい作品ですごくきれいですね。返詩はしばらくお待ちくださいますように。  

鉄塔

 投稿者:多次元梟  投稿日:2010年 8月13日(金)22時22分26秒
編集済
  とう、とう、トウ、トウ、塔……
雨上がりの後、しみ込む星影が額の上をかすめていきました
傘を縮めて、背中も縮めて、おじぎをすると
足下は少しだけやわらかくなりました
草むらの湿ったところに、すり切れたブーツを脱ぎ捨てて
夜が明けるその前に行ってしまったのですね
かぜの殻から抜け出した、速度で

    そこに腰掛けている
      あなたは
    私が最後に見た
      あなたでしょう
    仮そめの薄明に
      移りかけています
    重力の細胞から
      解き放たれて
    大気のかげに
      揺れています

目覚めはだんだんと向こうから、頬を満たしていくのです
悟る、ということは
体中に押し寄せる波のすべてを受け止めるということで
αからΩへ
どれだけ高く言葉を積み重ねても
冷たくそびえ立つ頂きから、溢れては落ちるのです

送電線の向こうの空が
斜めにやさしく引き裂かれています
忘却の隠れ家にいくら返そうとしても
滲みこぼれるその景色はたびたび降りそそぐことでしょう
三本に引かれた胸の爪痕がそれを証しするのです
私から星影の失われる、その日まで

  信じられますか
  私はまだここにいます

岩だなの上で
未来を数えていた日々を巡り見ているのです
1/Fの揺らぎの中に、あなたの呼び声を聞き分けようとして

  信じられるでしょうか
  私はまだここにつながれています

  雨上がりの野辺に
  さらされて、夜明けを口ずさんでいるのです

    *

……って、今気付いたのですが、返詩があるじゃないですか。
まどろむ海月さん、ありがとうございます。
返詩を基点に詩作するというのもなかなか美味しい趣がありますね。
普通に詩作するよりも難しそうですが……。
 
    (M海月) 掲載ありがとう。本当にうれしいです。返詩にはまた苦しむと思いますが、気長にお待ちください。  

夜空と海の狭間にある静寂

 投稿者:野の花ほかけ  投稿日:2010年 8月11日(水)22時46分43秒
  今、わたしが住んでいる夜の街に
たくさんの流れ星が
煌めいては 落ちていきます

願いを掛けたいと思うのですが 考えている間ににもう消えてしまって
あとにはなにもない静寂のみが遠い地平から空へとせり上がり
何故にここに留まっているのかすら
解らなくなってしまいます
ただ毎日たくさんの星が燃えていくのを
黙って見ているだけなのです

なにもできないし なにも言えない
そんなどうしようもない出来事を
ただみているだけのわたしは
なんて儚い存在なのでしょう

ああ、海月さん、きょうもまた ひとつの星が落ちましたよ
星は海に落ち明日は海星に生まれ変われるのでしょうか?


  **    **


かなしいです、かなしいです
生きていくことは哀しいことなのです
わたしとあなたの存在を隔てるものがあるということは
なんて哀しいことなのでしょう

//そうして 今日も星になって落ちてはいけないわたしは
いったいどうしてその罪を償うことができると言うのでしょう

海と夜空の狭間にはなにもなく
今日も流れ星の降る夜を あてどもなく彷徨い歩き続けているのです
 
    (M海月) ご投稿ありがとうございました。
世界は不思議に満ち充ちており、生きることはそれ自体 僥倖 なのだというのが、私の基本的なスタンスであり、根本的には楽観主義者のつもりでいるのですが、愛の欠如はそれを含めたすべてを無意味化してしまいます。
私の大好きな女性は、すべてを受け入れてくれる神の愛を、信じる道へと去っていってしまいました。彼女を引き止める言葉は僕にはなかったです。ただ、生きてさえいてくれればいいと思い続けています。
その存在が僕の心の支えであり続けてくれている親友がいますが、もう10年以上顔を見ていませんし、年賀状でわずかな言葉を交わすだけです。彼がもし死んでも、不思議なことに根本的には動揺しないのではないかという気さえします。僕達はもう死んでいるのか、すでに生死の境さえあいまいな関係にいる気がします。うまく表現できないんですけど。
返詩には長くかかりそうです。どうか気長にお待ちください。
 

楽譜 ー ある夏の

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 8月10日(火)23時24分58秒
編集済
                         .


  閃光の真昼
  降り注ぐ叫びに
  濁った雲の層が開き
  高熱の底無し穴の向こうに
  震える鳥達は落ちていく





誰が投げたか
空の底に小石が一つ
果てのない青い花の野に
生まれたばかり白の風紋は旅立つ
それは水溜りに揺れる夏の楽譜




硝子のまぶたに透ける午後
昼の月は淡く微笑む
飛ばした紙飛行機に
少年自身が乗っていて
誰も傷つけたくない老人は
緩慢な死に向かってボートを漕いでいる
揺らぐ陽炎の運河を
銀海へ航行する豪華客船
紙吹雪 絡まり乱舞する十色テープ 花火
気をつけて 白鳥座の近くに 巨大な氷山が


炎夏の危ういバランス
遠い微笑みは秋の水に浮かんで
自転車の人は倒れない
走り続けているかぎり


建物の隙間には虹彩の文字盤
少しゆがんだ時を刻むのは
黄昏の灯火に誘われているから


白い虹の海辺から
セピア色の距離へと少女の足跡


星の瞬きがせつない夜
死者たちを悼む竪琴に
銀河をゆったりと泳ぐ白鳥
見送るいるかは
初恋を抱えたまま





             .
 
    (M海月) 多次元梟さんの「息を落としたところに」への返詩です。ずいぶん時間がかかりました。暑さに弱い上に才能が枯渇気味なので、あれほどすばらしい詩への返詩にはとことん苦しみました。そのわりには、という気もしますが、当方はこの程度の実力ということで、ご容赦ください。  

黙示された夜Ⅱ

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 7月13日(火)20時50分51秒
編集済
                                         .

  「すべてが明らかになった。
  なのに、渇望だけが残っている。」
            (ジャン・ボードリヤール)




  1 落雷の夏

降り注ぐ叫びに
濁った雲の層が開き
焼けついた底無しの穴の向こうに
震える鳥は落ちていく





  2 黙示された夜Ⅱ

闇は無く冒険も無い 僕を止めて誰
か すべてに既知の網が つきささ
る自分 見えないものが見たい 最
大の謎は 触れられないものに触れ
たい 僕だなんて 理知は理知の背
中を見たい だから世界の果てへと
旅立つ ジャックは切り裂いた!
紅と青が交錯する ねえ、もう何も
見えないよ 今日まで生きてきた
そのために 捜しにいこう 呪文が
封印が解ける前に 救いにいこうき
みを すべての力はそのために あ
の惨めな枯れ木が 宇宙樹!?  暗緑
の無明の荒野に 黄色の河が流れる
さまよう群衆の叫びが 聞こえない
紅蓮の乱層雲の空 まだ間に合うか
も 終末を躍る怪鳥の形に 捜しに
救いに 切り開かれた夜空の 大星
雲 いこう!! 啓示の渦が





             .
 

息を落としたところに

 投稿者:多次元梟  投稿日:2010年 7月11日(日)21時35分0秒
編集済
     <息を落としたところに>



息を落としたところに
小さな夏が開く
陽炎の立つ道が雲の層にまで届いている
飛行機を絡め取ろうとしているのを
無口な赤ん坊だけが見ている
眠りの車を押されて、それはどこまでも押されて
白い坂の向こうに消えていった



               小麦色に輝く命は
               次々摘まれていきました
               わたしはただ見ているだけでした
               鼓膜が底無しの戦きにとらわれて震えていました
               左の親指が深爪していて
               そこに煮汁みたいな針先が染みて
               あばら骨も、手足もすべて
               ふうっと
               たんぽぽみたいに持っていかれたのです



南中する太陽を見ながら
小鳥のつがいが首をかしげる
不思議と喉が焼け付く
水が、水を、濁った水でもいいから、潤いが欲しい
たんぽぽみたいな軽い一日が
坂の向こう側に埋もれている
眠りの車に押されて、小鳥もまた消えていく



               これ以上のひかりはいらない
               もう一度甦る日があるならば



蝉が鳴いている
蝉が落雷に変わり、落雷が驟雨に変わり
再び冷えていくのを待っている
息を落としたところに、あの夏の慟哭は降り注いで
見える、たとえそこから遠く逃れようとも
聞こえる、溝にできたすべての陰のために
大気の音がすすり泣くのを
 
    (M海月) ご投稿ありがとうございます。すばらしい詩才ですね。癒されますし、うっとりします。
超多忙な時期でもありますので、どうか返詩はこのまましばらくお待ちくださいますように。
 

星空の再会

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 7月 7日(水)20時00分33秒
編集済
                  .



    雲の上も
    青空の上も
    いつも星空

    すべてが
    星空の出来事





おや

 そうですか

  もう一年たったんですねえ


ずいぶん長かったように思いますが
 お逢いすればまるで昨日のことのようで…


  この前は確か紫陽花の姿で枯れていったあなたでしたが
   この度は白鳥ですか


 ええ今度の私は足元の小さないるかです


わたしもあなたもこの次はてっきり
 向日葵なんかになれるかななんて
  思っていたんですけどね



    でも
   ここは 空のようで 海のようで
  こんな風に あなたと もう一度
 ごいっしょに なれるなんて
ああ なんて 私は





      どうか すべての存在が
      日々のあらゆる 悲哀を忘れ
      年に一度の七夕の まどろみの想いの中
      平和で 幸いで ありますように





               .
 
    (M海月) ほかけさんに、返詩です。すみません、超多忙になっていまして、なんとか七夕の夜に間に合うようにと、間に合わせで作ってしまいました。気に入っていただければ嬉しいのですが  

再生

 投稿者:野の花ほかけメール  投稿日:2010年 6月27日(日)15時14分35秒
 

一房の紫陽花が 枯れようとしています
かたち在る物は やがて壊れる
そのようなことなど 自明の理 誰もがそう言うでしょう
口々に、 新しい物へ、新しい物へ、 群衆は叫ぶでしょう

ですが、生あるものを惜しむ性、それがひとの弱さなのです。
自分が弱いが故の弱さなのです。

悲しいことに、右手に剣をかざし
左手には人の亡骸を引きずりながら 前へ前へと進むのです
紫陽花は枯れても また明るい向日葵を見せるために
屈しても 屈しても また太陽を求め続ける花のように
強くあって欲しい と、

そう求めずにはいられないのです。





ご無沙汰しています、まどろむ海月さん。
女々しいと思われようと、偽善と蔑まれようと、これがわたしなのです。この痛みは消えません。
しかし、強くありたいと、強くあって欲しい、と切実に望むのです。 再生のなかにまた生まれてくる物があるからなのでしょうか。

 

 
    (M海月) ほかけさん、ご投稿ありがとうございました。返詩の方は今しばらくお待ちください。  

(無題)

 投稿者:哲コミ!  投稿日:2010年 6月13日(日)16時57分59秒
  新設!哲学コミュニティ!!
できたてほやほやですのでよろしくお願いします!

http://www.geocities.jp/sl_hitosikiri/Chihiro/top.html

http://www.geocities.jp/sl_hitosikiri/Chihiro/top.html

 
    (M海月) ここは詩の掲示板です。HPのPR等は、置き詩を条件としておりますので、よろしくお願いいたします。  

紫陽花よ

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 6月12日(土)22時04分24秒
編集済
                 .


黄昏たちの回廊
夕闇に漂う影が伸び
遊び疲れた風がぬける
空の帰り道


 からん からん

 温かい背中に燈った
 川面のまどろみ

 紫陽花の青の向うに
 匂い立つ夜の静けさ



  蛍を追いかけた
  影絵のような
  少年の憧憬
  風にさらされ
  月明かりで見た
  ビー玉の中の
  遥かな星屑
  に重なる





山の彼方への旅

 ああ ほんとうに
 何が 人のさいわい
 なのだろうか


 街灯りが
 とおく とおく
 M67星団のようだね
 紫陽花よ





                     .
 
    (M海月) ほかけさんに、返詩です。05/06/21初出の「紫陽花よ」を、全面的に改訂してみました。  

月の香り

 投稿者:野の花ほかけメール  投稿日:2010年 6月11日(金)20時29分10秒
  夜が匂い立つ この世の静けさ
儚きもの それは生命

月夜の香りが わたしを照らす
花も眠れよ 月の満ち欠け
我も眠れよ 世迷いごと忘れて
苦しみもまた この夜の証

彷徨える人有るならば
月夜の闇よ、わたしを照らせ
 

タロットの少女

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 6月 4日(金)20時17分27秒
                     .

星空に眠る私の
青い夢の頬に
夜風のように
触れたのは
天使の羽ではなく
運命のタロット


アルカナを伝える少女の
声はあまりに甘く
右手に月影 左手に星影を浮かべ
微笑みながら回転を早める
くるる るる くる
実存から永遠への
坩堝を墜落しながら

思わず叫んで手を伸ばした
私もまた悪夢へ深く
転落していく





 カタカタと鳴る
 脳髄まで暴かれたが
 愛は見つからない
 あいはみつからない
  I lost your ・・
 自動人形を操るのは
 螺旋状の自然力
 撥条仕掛の笑みにも
 ばねじかけのえみにも
 骨牌の理性にも
 カルタノリセイニモ
 刻印された謎がある

 渦巻く霧の中
 植物模様に変化する
 掠れがちな
 ルーンの呪文

 宇宙の闇森を辿り
 絛虫のような蔓に導かれ
 見つけた小函には
 薔薇の心臓が





     (M海月) ほかけさんに、返詩です。
             08/01/11初出の「自鳴琴の夜」 を改訂縮小してみました。
 

真実/その逆位置

 投稿者:野の花ほかけメール  投稿日:2010年 6月 3日(木)00時44分24秒
  ふたつの 白いかっぷが
確かにそこに 置いてあったの
たとえそれが
夢のなかの できごとだとしても

まどろみだけが そのかっぷの白さを
ますます本物に近づける

だけども 所詮、すなでできた器
水を注げば みるみるうちに
こぼれてゆく くずれてゆく

 *

予感は知覚する
出来事のはじまり、そのひとつ先の現実を
タロット占いの カードは逆さま
だから わたし 知っていた わけもなく 理由もないのに

さらったものは もういない
かげものこさず
あたたかなうるおいの感覚だけを この手のひらに

わたし ひとりで
あなたを抱いて
、それでもわたしは





   ***  返歌ありがとうございました、まどろむ海月さん。嬉しかったです。
     また、時々あそびに来てもいいですか?                 ほかけ♪
 
    (M海月) ほかけさん、御投稿ありがとうございました。
時々などと言わず、いつでもどうぞ。
 

ひきしおのように

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 5月31日(月)20時05分27秒
編集済
                              .


別れの日を思わずには
人を愛せなかったあなたが
口ずさんでいた「いそしぎ」

 そして やはり




すべてをさらう
引き潮のように
あなたは去っていった

 背後から近づく
 やさしい足音さえ
 残さないで

  陰りある微笑みも
  この日の予感だったのだね





引き潮のように
あなたは去っていった

 広がる白砂に寝転んで
 薄い耳に透けた陽のまばゆさも

  しなやかにからみつく
 腕(かいな)のつめたさも

 温かいティラミスのような
 潤んだ一瞬の感触も

 残さずに


  あてどない海鳥
  への視線も
  この日の予感





 深紅の薔薇を
 降りしきらせた
 夜毎の訪れも

 春のあけぼのの
 かすかに甘い
 寝息も

 香り立つ
 二つの珈琲カップの
 白い幸せも

 残ってはいない




 小さな公園の
 ベンチにも
 風に揺れる
 ブランコにも

 あなたの不在
 だけが残されて




  曇り空のけだるげなしぐさ

  聞きとれなかったつぶやき

  通り雨に隠された涙





すべてをさらう
ひきしおのように
あなたは去っていった




 私に残されたのは

 かげりの消えない

 ほほえみ





                    ・
 
    (海月) 野の花ほかけさんに。何とか返詩を作ってみました。気に入っていただければ幸いです。  

引き潮

 投稿者:野の花ほかけメール  投稿日:2010年 5月28日(金)22時02分26秒
編集済
  海の音など 知らなかった
引き潮にこそ
なにもかもが さらわれていくことを

 +

たったふたりだけの海でした
あの日のふたり 満ち潮だったから
うみは
鮮やかに蘇って、飛沫で創られたレースの造形で
ことばを持たない花嫁に ベールをくれていたのです
砂から少し顔を出した 貝殻達が
誓いを見守るあかしでした

ずっと先まで駆けていって
波はそのあしあとを消していったけれど
潮風は声をのせて届けてくれた 見失わないようにと
陽の当たるほうへと

 +

いま、潮騒のおとを聞きながら
忘れようとしている
何もかもを
なかったことにして帰ろうとしている

違った海辺に立ちながら
手ざわりのない 匂いを持たないおもいでを
わざと置き忘れて
さらっていって貰おうとしている
 
    (海月) 野の花ほかけさん、ご投稿ありがとうございます。返詩の方は、今しばらくお待ちくださいますように。私めの詩の源泉、いささか枯渇気味なのです。  

時空Mから

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 5月24日(月)20時13分18秒
編集済
                               .


微かに
星々が瞬いて
淡い菫色の
浄められた土に
すべてが安らいでいる
 鳩も獅子も
 蛇も蝶も
 貝も鯨も
 樹も花も
 あなたも
 わたしも

意識は其処より立ち上がり
其処へと帰ってゆく
 昇る陽 沈む陽





宗教も国境もなく
戦争も諍いもなく
敵も味方もなく
富も懊悩も貧困もない
 すべての上に
 降りしきる

にくしみもおごりも
ねたみも侮蔑もなく
怒りも貪欲もない
 雪なのか 光なのか

ながれうつろいゆく
やわらかなやさしさ
私というものがあやふやで
 雲なのか 霧なのか

自と他の 陰と陽の 空と地平の
不分明なはざまにあり
懐かしい寂静のよろこびに充ちている
 明け方なのか 黄昏なのか





今日も
私は立ち上がり
扉を開けるだろう

白熱する陽光の地で
たとえ修羅の道を歩んでも
私はいつも感じていたい
すべのものの故里から
銀の風が届ける
微かな淡い
星空の歌を





  それは
  日々のささやかな
  幸せの時空

  そして 私の愛する

 ことばは
 其処から
 うまれ
 あなたに
 てわたされる





            .
 

五月にさまよう

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 5月21日(金)21時12分50秒
                                .


五月の渚を
散歩する白い幽霊

恋人の笑顔で振り返って
消え去る

 現実ではありえなかった情景に
 こんなにも度々顕われ
 胸を痛ませる




カモメは滑ってゆく
風の大きなうねりを
淡い化粧の水平線
 やわらかな肌の感触
 そして鼓動

 打ち寄せる水色に
 白い足を伸ばして
 君の微笑み
  ほほえみ
  曲線をたどる指
  微かに開き
  潤んだ調べに
  反応する突然の
  フォルテ


  波は繰り返し

  くりかえし 重なって

  かさなって 寄せて

  深く ふかく 達して…





  けだるい砂を踏みながら
 細いウエストに
 手を伸ばせば
 傾けられた
 髪の匂ひ


 そんなとき
 少年の日の
 草原を
 駆けた思い出さえ
 錯誤され
 君と二人だった
 気がして





面影に誘われ

彷徨う日

五月の潮風に独り

わが身を抱きしめ

このまま透明になれるならと

切に 思うのです




           .
 

五月の妖精

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 4月29日(木)00時45分45秒
編集済
              .



五月の翠(みどり)の面影は
透きとおった
風の中の
あなたのささやきに似て
ほそく葉脈のように
しのびこむ



麦藁帽子の下の
淡いほほえみ
白いスカートの
しぐさに揺れて





 小石の水切りのように
 たどりついた恋

 輝く身体を
 抱きしめたとき
 花蕾が落ちた
 波紋のように

 しなやかな
 貴女の香りが
 広がった





思い出は
薄い羽の
五月の妖精

細いタクトの
軌跡に癒されて
半ば泣いているような
心の横顔





         .
 

春の別れ

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 4月 6日(火)01時51分15秒
編集済
                           .

  Ⅰ ためらう水紋


しぐれる春
名残りの花に
しずくしたたり
風もよう 波もよう
光さすらひ 想いまよひ

水紋 水紋 水紋 水紋 …



繰りかえし くりかえし

もどるも ゆくも

あたたかなはるのなかで





  Ⅱ いつかのティータイム



珊瑚礁の光のかなた
陽炎のなかの午後


シャム猫の手足の
白いテーブルに
白い椅子


かぐわしい匂に酔ひ
甘く温かい流れが
身体の奥に届いて
わたしはほっと
息をつく


透明なあなたの
ピアノのそよぎが
耳に触れるのは


約束された

「いつか…」




  Ⅲ 光の指


水の花が 青空に咲き
あなたの波紋に ほころんだ


時は優しさに洗われて
思い出を柔らかに染める




 遠い島に遺してきた
 憧れが呼びかけるが


 昨日の風は
 哀しみの迷路に
 とまどうばかり





春は微笑みを 地平に奏で
野にも花畑にも 光の指が舞う


 鳥よ
 あたたかな季節に包まれて
 君はまっすぐに飛びなさい


 若い命が導く
 明日の窓の
 彼方に





                        .
 

忘れもの

 投稿者:りらメール  投稿日:2010年 3月11日(木)11時33分23秒
  ものを忘れてきても
家に たどりついてから
気づいている
帽子 手ぶくろ 傘
どこで 置き忘れたのか
記憶は おぼろ気で
うーん
フィルムを巻き戻すように
思い出そうとしても
肝心のワンシーンが ひとコマ飛んで
つながらない

おっちょこちょいで そそっかしい

あわてふためいて
忘れものに でんわをかけている
もしもし
忘れものは いつも話し中だった

だれかと話しているのなら
さびしくは ないのだろう
だけど
あなたを どこかで
置き忘れてきた わたしのほうが
からっぽで

つながらないのに
ふたたび でんわをかけてみる
そのうち

じぶんを どこかに置き忘れ

置き忘れてきた じぶんが
じぶんに でんわをかけていて
置き忘れた じぶんに
じぶんも でんわをかけていて
いつもでたっても 話し中

なにかをしようと
昇る途中の かいだんで
ふと 忘れ
降りる途中の かいだんで
ふと 思い出したら
なまり色の髪が 一本ふえていた

収穫遅れの古い大根の
輪切りのような
鬆(す)が ひろがっている
脳みその写真を 思い出している
覚える機能が
削られていく変化に
時の流れを 証言して
うすれてしまうのだろうか
じぶんさえも

なによりも 忘れたくない
あなたに でんわをかけている
話し中で ないことを
ねがいながら





☆まどろむ海月さま
 この作品に、うれしいコメントをいただき、ありがとうございました。とても、うれしかったです。心から感謝いたします。
 
    (海月) こちらこそ、いつも感謝申し上げるばかりです。  

クレマチス

 投稿者:りらメール  投稿日:2010年 3月 4日(木)22時48分4秒
  夕暮れは
いそぎ足の子猫のように
つらなる屋根を駆け抜けて
夜をむかえにいくから
だれにも声をかけられず
なくしたものを 探しまわっている
いったりきたり しながら
どこにもいける わけでもないのに
だれもが はるかな故郷に
わすれものを見つけるために
遠ざかっていくようで
雪の峠を越えて
届けられた 宅配便
胡桃色のつつみ紙をあけたら
見知らぬあなたから
クレマチスの花言葉

さみしがりやの
こがらしを あたためています
なくしものは
げんきに しています

溶けはじめた宵闇に
まどろむ あなたの薫りを
真似ていた
白い絹糸のまなざしが
長いまつげの影を
吹きぬけていた





☆まどろむ海月さん、クレマチスをお読みいただき、ありがとうございました。
君のいる風景は、シリーズで描かれているのですね。
あふれて生まれる言葉が、すばらしいですね。うらやましいです。
幻想的な世界で、まどろむ海月さんの輝きあふれた作品ですね。
 
    (海月) りらさん、ありがとうございました。あなたの新鮮な表現と比べるとよくわかるのですが、古びた詩集から掘り出してきた作品ですから、表現にも懐かしいセピア色の染みがあります。  

君のいる風景(4)

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 2月28日(日)22時27分58秒
編集済
                                 .



深まる夕闇の中で
水底まで透きとおった
滑らかな黒の湖水に
斜めにさし通した櫂から
膨らむ波紋 滴る雫が
清澄の音階に流れつづけ・・

静かに進む二人きりの小舟

君の影が波璃に映った
伝説の少女の白い指ように





ああ 満天の星空が
湖底から宇宙の果てまでも

巨きな夜の水晶球の真中で
身を寄せて見た

大気の中を流れゆく 時

さやかに燦めく風を





天頂から 湖面に
星が 真っ直ぐに墜ちて
広がる黒い波紋
訪れた眠り・・

夜の山気の中を
いつまでも漂っていた
僕たちの小舟





まだ薄暗い 朝もやの中
小舟に乗った二人 やがて

限り無く透明な夜を沈ませた空の底から
なおも瞬く幾つかの星

清浄の大気の中
沸き起こり移りゆく雲を
ばら色に染める曙の光

そして目前に
燦然と輝く湖面


一日の誕生





                                .
 

君のいる風景(3)

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 2月28日(日)01時28分36秒
編集済
                           .



見上げた月は 皓々として
雪景色の深い谷の 底にまで
光を落としていた

白い中空の湯のなかで
魚のように戯れたね





紺青の空に 雲

高原の蒼空を
何日も さまよった

大空の神聖な変貌
永遠の高みへの
憧れと祈り

その彼方に君はいた
息遣いが感じられる
身近にも・!

そして そのとき
世界の底に流れる
星空 ガ見エタ・・





神聖な夜を鎮ませた 林 の
鮮やかな大気に漂う水蒸気の粒子
朝の光が木洩れて

原生のつぶやきが聴こえる
岩と苔の道

木の間から見える湖水は
朝日に燦めいて
山間から下りた雲が
かすめては過ぎる





苔むした原生林の斜面を
果てもなく登り続けた
冷たく 底の知れない・・
やさしさ に包まれて

霧が 林の中を過ぎて行く
幾度もふり返りながら





なだらかな霧の高原を二人は歩いた
現われては消える 木立と
岩肌と 高山草花と

草の中に安らぐ君の姿も
這うように 通り過ぎる霧に 隠れて
時々 見えなかったりする

どこか べつの世界でも 二人だった
のだろうか こんなふうに





                    .
 

君のいる風景(2)

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 2月27日(土)00時50分31秒
                  .


午前の森の中に
七つの池を巡った
エメラルド色を湛えた 太古の静寂は
やさしい風をふくむたび
燦めく微笑みを見せた

僕たちの前の 永遠の現場

蒼空の中には 白い幻のように
わきおこる思いと とめどないあこがれが
その影を落としてゆく・・・





空 から降りて来た 君 を
水の中から 見上げた僕

逆光の中の透明な空間の
向こうには白い鰯雲が・・





岩膚に充ちた光と沈黙
    あれは・・・
虚空を過ぎてゆく幻影
   たしかに・・
熱泥のささやきと大地の叫び
   ぼくたちの・
始原を逆登る小さな歩みを見守る
  神の掌

  吃立する白い噴煙





高い爆音に思わず振り返ると
木の間から 神の山が臨めた

あの不気味に吹き上がる
噴煙の空間から
降りて来る灰





迷い込んだ小径を登りつめた稜上は
人知れない 神域 だった
尾根の両側は深く海に落ちていく

空間が少し歪んでいた





陸を離れて海の彼方へ
潮風と日のかがやき
そのふしぎな解放感のなかで
僕たちは眠った

海がひびき 鳥が飛び 波が燦めいた

光の中を遠く去りゆく漁船 島影・・





                         .
 

「春の頂」から

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 2月25日(木)22時56分0秒
編集済
                       .


水面の きらめきが 遠くから 広がった
扇のように くりかえし くりかえし

君の 遠い視線に ささやく
はにかんだように とりとめもない

風の言葉…





  君のいる風景(1)





夜の階段を昇って
出会ったね

空色のセーターと
風色のトレーナーを着て
出かけよう
雲と星の間の扉から 始まる
旅へ





森の中に
光をはらんだ
まっ白な朝霧が
流れこんだね





空中から見降ろした
故郷の街なみ
白い花が散っていて・・
あの山上の春の中にも





フェニックスが茂る林に
幻のような野生馬の跡を追って
突然開けた真っ青な海

潮風を受けてたたずむ
透明な大きな瞳 に
いつか つつまれていた





思い出の函に入れる
夕暮れの結晶を求めて!
あの日も 風に吹かれ
長い草山の坂を走っていた二人





天と地を 一つに包む
銀色の霞の真中
岬の山上に 一日は
その壮大な空間を
黄昏れていった

  燈色の陽の記憶を残して

海からの風にさらされ
なびく春草を無心に食んでいた
野生馬達・・・





星が 海に 落ちたのか
夜空は はるかに 拡がって
星座の浮かぶ 闇の底からは
微かに 潮騒が 聴こえてくる

 漁り火が 北七星のように・・・





青島の海 空
荒々しい千畳敷 激しい波
風の遠景に立つ白い灯台

  灯台に寄り添った細い君の
  息遣いが伝わる・・

こうした 風景の彼方 なのに





                     .
 
    (海月) この春は、幸せそのものだった頃の詩を掘りおこしてみようとかと
技巧をこらすことなど、思いもしなかった日々の作品群です
 

交錯詩「星欄干 ― あなたと私」 修正

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 2月19日(金)11時14分43秒
編集済
                                .



おやゆびとこゆびほどの 何気ない距離に
  あなたと 私
うずくまる ガラス玉のメールは
 自分のなかの可能性を 想像し
ふりかえらない後姿に砕け散る
 てみれば きっと

空を泳ぐ茜雲になるというあなたに
 同じところばかり すべて
海を這う漁り火になるといい
 他者は違う日の自分の姿 それでも
ふたつの行く先の ひとつをえらべずに

 この感覚は私だけのもの この身の痛みも

足の先から産道を潜り抜けてきたわたしは
 自分の小ささが嫌で
何年生きてきても 四角い地球に馴染めずに
 すべてを否定したくなった日
漠然とした宇宙をうまく歩けない

 私は海辺に出て
くすんだ欠片は完熟した林檎の実のように
 一つ 一つ 貝殻を見つけるように
咲き乱れた桜の花火のように闇に滲みだす
 自分の感覚を 拾い集めた

いちばん暗い襞(ひだ)に墜ちてゆく
 空の青さ
いちばん綺麗にかがやくため
 海の匂い

水平線のように地平線のように ひび割れた
 潮騒の響き 風の感触
ビードロの天の河 渉(わた)れば血まみれになる裸足
 さざ波が洗う 星屑をなめれば 辛く
あなたのためなら死んでもいい だけどあなたを
 それらは すべて
殺(あや)めて罪人(つみびと)になるのは 砂を吐いた貝殻なの

 比較できない
彦星と織姫をへだてる半熟の傷口に 破片
 自分だけのもの
の水が沁みこんで 誰も足を踏み込めない
 この胸の痛みさえも

凍てついた夜の底に沈んでいた
 愛おしんで
星欄干が時空の針を折り曲げていた
 生きようと 思う





                      .
 
    (海月) りらさんから特別のご了解を得て、交錯詩を作ってみました。
「星欄干」は、よく推敲された緻密な表現の作品として完成されています。それに比べて拙作は、きわめて平凡な表現の作品ですが、りらさんの素晴らしく緻密な作品と交錯させることで、かえってその平凡さが活きてくると思えたのでした。全体としてのポリフォニックな共鳴効果によって、「星欄干」の方にもまた別種の魅力が生まれるのではないかと期待して提案した試みでしたが、幸いりらさんから温かいご厚意と支持をいただき、さらに推敲を加え、完成させることができました。
ポリフォニックな共鳴効果を際立たせるために、「星欄干」の行かえについてもわずかな変化を加えてみましたが、事前にりらさんからの心やさしい了解が得られてあります。
それぞれが独立した詩として完成させてありつつ、他者との良質な交錯の試みてみる。これが成功すれば、全体としてオペラの二重唱のように魅惑的な作品に仕上がるはずなのですが、どうでしょうか。自作一つ作るより、今回は苦労もし充実もした時間を重ねることができました。
 

交錯詩、ありがとうございました。

 投稿者:りらメール  投稿日:2010年 2月16日(火)16時54分20秒
  まどろむ海月さん
素敵な交錯詩を、ありがとうございました。
すごく気に入りました。
まどろむ海月さんの現実的なイメージが交叉され
ダブルイメージの、奥深い作品になりましたね。
素晴らしいです。(わたし、ひとりで喜んですみません)

ありがとうございました。
深く感謝いたします。

タイトルも良いですね。
あなたと私

勉強させていただきました。


最近、詩の先輩から、
ダブルイメージを三つ編みのように編みこみながら
最終連でまとめる、という創作法を教えていただき、
そんな感じでの創作にチャレンジしてみようと思っています。
むずかしくて、なかなか思うようにいかないのが実情です。

ふたりで創作すると、別の世界が混ざり合って
こんなに素敵になるのですね。

お忙しい中、おつかれさまでした。
深く感謝いたします。
 
    (海月) こちらこそ、本当にありがとうございます。心やさしい言葉を重ねていただき、深く深く感謝いたしております。  

交錯詩「星欄干 ―  あなたと私」

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 2月 9日(火)15時40分37秒
編集済
                    .



おやゆびとこゆびほどの 何気ない距離に
  あなたと 私
うずくまる ガラス玉のメールは ふりかえ
 自分のなかの可能性を 想像し
らない後姿に砕け散る
 てみれば きっと 同じところばかり

空を泳ぐ茜雲になるというあなたに 海を
 すべて 他者は
這う漁り火になるといい ふたつの行く先
 違う日の自分の姿 それでもこの感覚は
の ひとつをえらべずに
  私だけのもの この虫歯の痛みも

足の先から産道を潜り抜けてきたわたしは
 自分の小ささが嫌で
何年生きてきても 四角い地球に馴染めず
 すべてを否定したくなった日
に 漠然とした宇宙をうまく歩けない
 私は海辺に出て

くすんだ欠片は完熟した林檎の実のように
 一つ 一つ 貝殻を見つけるように
咲き乱れた桜の花火のように闇に滲みだす
 自分の感覚を 拾い集めた

いちばん暗い襞(ひだ)に墜ちてゆく
 空の青さ
いちばん綺麗にかがやくため
 海の匂い

水平線のように地平線のように ひび割れた
 潮騒の響き 風の感触
ビードロの天の河 渉(わた)れば血まみれになる裸足
 星屑をなめたら 辛かった
あなたのためなら死んでもいい だけどあなた
 それらは すべて
を殺(あや)めて罪人(つみびと)になるのは 砂を吐いた貝殻なの
 比較できない

彦星と織姫をへだてる半熟の傷口に 破片
 自分だけのもの
の水が沁みこんで 誰も足を踏み込めない
 この痛みさえも

凍てついた夜の底に沈んでいた
 愛おしんで
星欄干が時空の針を折り曲げていた
 生きようと 思う




                       .」
 
    (海月) りらさん、ごめんなさい、許可も得ず、返詩がわりの交錯詩を作ってみました。奇数部分が、りらさんの「星欄干」をそのままに、偶数部分に05/10初出の拙作「あなたと・・私・・」(今回わずかに改訂)を、うまく絡むように行がえなどをして配置してみました。気に入っていただけると、うれしいのですが。  

星欄干

 投稿者:りらメール  投稿日:2010年 2月 6日(土)10時00分43秒
  おやゆびとこゆびほどの 何気ない距離に
うずくまる ガラス玉のメールは ふりかえ
らない後姿に砕け散る

空を泳ぐ茜雲になるというあなたに 海を
這う漁り火になるといい ふたつの行く先
の ひとつをえらべずに

足の先から産道を潜り抜けてきたわたしは
何年生きてきても 四角い地球に馴染めず
に 漠然とした宇宙をうまく歩けない

くすんだ欠片は完熟した林檎の実のように
咲き乱れた桜の花火のように闇に滲みだす

いちばん暗い襞(ひだ)に墜ちてゆく
いちばん綺麗にかがやくため

水平線のように地平線のように ひび割れた
ビードロの天の河 渉(わた)れば血まみれになる裸足
あなたのためなら死んでもいい だけどあなた
を殺(あや)めて罪人(つみびと)になるのは 砂を吐いた貝殻なの


彦星と織姫をへだてる半熟の傷口に 破片
の水が沁みこんで 誰も足を踏み込めない

凍てついた夜の底に沈んでいた
星欄干が時空の針を折り曲げていた





☆まどろむ海月さんへ
 星欄干をお読みいただき、深く感謝しています。この作品は、まとめるのにとても苦心しました。むずかしかったです。

 春色チョコレート BRACK 悪意の夜 どのお作も、言葉の編み方が新鮮で秀逸ですね。素晴らしい感性を持っておられると思いました。
 お忙しい毎日、お体に気をつけて、素敵な作品を綴っていってくださいね。
 
    (海月) りらさん、ありがとう。「雪化粧」「華化粧」「朝」の三作への返詩が、「冬化粧 花化粧」だったとご了解ください。
「星欄干」ずいぶん完成度が高く難しい作品ですので、これまた返詩に苦労すると思いますが、気長にお待ちください。
実は仕事をいい加減にこなして、Юさんとのメールのやり取り等にややはまっています。あの方の「色彩天使論」というのが極めて難解ですが、またものすごく質の高い刺激的な論文で、すっかり魅了されてしまったのでした。
いつか、あなたとの交錯詩をやってみたいな。
 

悪意の夜

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 2月 5日(金)22時23分13秒
                   .



  Ⅰ 春色チョコレート


ファッションを何度も変えて
すれ違ったのは
君の待ち伏せ

タイトだったミニスカートが
今日は薄いフレアーですか
降参してホテルの予約は
銀河の上に



シャトー・ディケムを傾けながら
いたずらっぽい目が
ひらひらと色っぽいね
はじめまして そうですか
美大生ですか


 耳と首筋からほどいていく
 わくわくする包装紙
 エナメルの水色に金のリボン
 ピンク色に白と銀のリボン
 御自慢の足は白磁かと思ったけど
 実はチョコレート
 指に甘く 舌にとろける
 全身 春色チョコレート


 このスイーツの迷宮は
 ずいぶん扉が多いんだね
 唇で開けては驚かされてばかり




セント・バレンタイン
クリーミーな夜は長いから
何度も深くゆっくりと
コーヒー色の闇の上
テイスティなラテアートを
描いていこうね





  Ⅱ BLACK


   我ら 彼処より来たりて
   行き去りぬる 彼の果て
    黒


  君の瞳の奥
  宇宙の闇


出逢ったとき
ショートカットの髪も
細い首に似合う
セーターも コートも
綺麗な切れ長の目の アイラインも
ネールも ピアスも
唇さえも
 黒


暗い部屋
私の上で躍る
シルエット


細やかな
白い肌の
やさしい
翳り


罠を仕掛けたのは君
一度きりの約束
初めてだと知られて
隠した悔し涙まで
 黒


硝子のような爪が
くいこんで
その痛み
 くろ


 偶然に再会した街角
 男をアクセサリーのように引き連れて
 さらに短くなった髪に
 三倍に増えたピアス
 まるで気づきもしないように
 行き過ぎたね
 光るラメ
  黒


  もう何処で再会しても
  決して認めることはないのだろう
  僕は存在しない過去


  いつかどこかの街
  主婦として ただ風景のように
  通り過ぎる気だね




  あの華の棘
  ポイズン
  消えない痛みと苦さ
  哀しく冷たい天使の微笑
   黒



  年老いた果て
  やがて私は帰っていく
  その闇の色に
  その微笑を思い出さずには
  いられないのを
  君は知っているから





  Ⅲ 悪意の夜


王様の与える勲章
のおかげで この国は安泰
林立するビル



白い部屋が眩くて 君はシルエット
シーツは けがれのない海

カクテルは バイオレット・レイク
ゆっくり ゆっくり 倒れて



肌の陰影をたどる指先
白い鍵盤のソナタ
猥褻な黒鍵
八感の歓喜に 捩れていく


 知ってたかい 絶妙の香水には
 死臭が配合されている


最上階の部屋の窓は大きくて 月が近いね
あの満月は 砂漠を照らしてる
難民たちのテントを



 テレビを見てごらん
 数え切れないね
 法王のために流された涙の数と
 飢え死にした子供達にたかる蝿の数



 死臭は砂漠の彼方から
 ビルの谷間から



 「涙は阿呆が流すもの
  信じられるのは この痛みだけ」
 「でも 幸せを知っているから
  痛みもあるのでしょ」
 (おお 今夜は賢い君に 百回キスするぞ!)



今宵の悪意は
黒い翼となって
星空を漂うが
射落とす天使は
行方不明



さあ もう一度
豊饒の海へ
漕ぎだそう





  疲れたかい
  明け方の外気は
  冷たいんだよ
  もっと身を寄せて
   貧しい子どもたちをまねて
   震えながら 神の許しを乞おうか





           『悪意の夜』05年4月初出(前ローマ法王逝去の直後に書かれた)
 
    (海月) 春色チョコレートは、新作。
BLACK,は初出が 05’6/15、今回、わずかに改訂しました。
『悪意の夜』は、05年4月初出以来、少々誤解や批判が集まった作品です。今回 最後の連(聯)を再改訂し、さらに末尾に新しい連(6行)を加えて、やっと落ち着きました。
Ⅰ・Ⅱの詩を加え、全体を「悪意の夜」としたら、切ない大作になったなと、自分では納得できています。
 

赤の林檎

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 1月30日(土)21時25分29秒
編集済
                      .




人間には
なあ~んにも
わかっていない


 赤が赤であることも
 赤とは何であるかも

 自分が何もわかっていないことも
 何がわかっているのかも





林檎が秋の中で
ぽんやりと幸せそうに
生(な)っている


 自分が赤いことも
 なぜ赤いのかも
 なあ~んにもわからないままで





なあ~んにもわからないまま
赤く熟れていく林檎

なあ~んにもわからないまま
人に振り回されている人間



 そのすべてが不思議な
 空の出来事





すべての存在は 空の子どもです

すべての生きものは 光の子どもです





                .
 

「青」 ― ツナ氏へ ―

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 1月28日(木)23時53分12秒
編集済
                 ・


どうしてか
どうしようもない青が
どうしようもなく在る

私とともに

あなたとともに




どうしてか
どうしようもない
どうしようもなく青

世界とともにある
この叙情的な「青」

人の感性とともにある
世界の謎の深さ




ツナさん かって
世界をつつむ叙情性について
語りあったことがあったね


認識より
感覚と愛は
さらに深い と

たしかに





                  ・
 

 投稿者:りらメール  投稿日:2010年 1月23日(土)13時35分44秒
  かならず おとずれてくる
まどを あけたら
ことりの声と いっしょに
げんかんのインターホンをならして
ドアをあけたら
なに色ともいえない服を着て
ちいさく おはよう、と
ひらいたばかりの はなびらに
こしかけて すきとおる
ひとつぶの露になって
あいさつしている
ひきたてのコーヒーの薫りをつれて
やきたてのパンの匂いに
マーガリンのように よりそって
ジャムのあまさに
てをあわせ ぶじを祈っている

そらのてっぺんに 陽がのぼると
昼と なまえをかえて
やまのかげに 陽がしずんだら
夜と ふたたびなまえをかえて
まるいてんじょうを ひとめぐりして
また おとずれてくる
だれの ところにも
くらやみの幕をあけ
約束していなくても

こんなにりちぎな あなたを
いつか うらぎってしまうのは
わたしなの……

いつか かならず
あなたを むかえられなくなる
あしたの約束できなくて
ごめんなさい

ねむりから 覚めると
あなたのひかりが 射している
あちらの世界で 目覚めても
いまのすがたで おとずれてくれますか?

思考も
鼓動も
焼きつくされた 灰の粉に
なにも なかったように
にんげんだったころのように
にっこり ほほえんで





まどろむ海月さんへ

朝、をお読みいただき、ありがとうございました。朝を迎えられることの素晴らしさを表現したくて書きました。いつか、迎えられなくなることがあっても、何事もなく、残された人によりそっていてほしい、そんな朝への思いを書いてみました。
深く感謝いたします。
 

華化粧

 投稿者:りらメール  投稿日:2010年 1月23日(土)13時16分33秒
  ほのめく ひとときに
氷雨に濡れた 肌と肌
こすり合わせて 熟れた身を
ゆびのはらに 焼きつけて

すべらせたくちびるの
薄紅散らせ あなたの首筋に
吐いた息から 白い血潮があふれだし
秘めた蜜を むすび合う

からだの輪郭を うばい合い
越えられない境界に 埋もれて
氷柱の距離を たしかめ合う

やがて あわいひだまりの光射し
もたれる重みを 受けとめて
はらはら あつい涙がすべり落ち
もつれた髪が ほどかれる

まばたく睫毛のゆれる ひとときに
からめた あなたのゆびさきの
ちいさな華に なれたなら
遊女に 生まれたことに
悔いは ないでしょう

愛も命も えらべずに
艷色の衣を ぬぎすてて
抱かれて にぎりしめたぬくもりに
こぼれて亡くなる 雫のひとつぶは

あなたに捧げた 雪の華





まどろむ海月さんへ

冬化粧 花化粧  ありがとうございました。とても、美しい作品で、うれしい限りです。
雪の衣をまとった冬の天使が、むくわれない想いをやさしく包んでいるようです。
ありがとうございました。 華化粧は、自信のない作品でした。少しよごれた美しさ、
というのを表現したいと思って書きましたが、よごれものは難しいですね。
けれど、読んでいただき、心より感謝いたします。
 

冬化粧 花化粧

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 1月22日(金)00時32分54秒
編集済
                     ・

青に蒼が重なり
空の行方 風の行方
降りしきる水晶


しろに白が重なり
雲の行方 水の行方
絹は舞いに舞い




追憶の衣ははためき
旅人は斜め

手を伸ばしても
山 山 山


埋もれても 重なり
重なり 埋もれて

苦悩と安堵が
叫びとささやきが 重なり

波に重なり 闇に重なり
孤独に重なり 悲しみに重なり

埋もれても 埋もれても 重なり
 重なり 埋もれても なお





 降りしきる
 雪の彼方に
 花の影

 降りしきる
 雪とともに
 花の光





 ゆくもの
 くるもの




 はないちもんめ





                     .
 
    (海月) りらさんへ。お陰様で、久しぶりに納得ができる自信作と言える返詩ができました。あなたの「華化粧」「朝」という作品への思いもあって、作りました。  

雪化粧

 投稿者:りらメール  投稿日:2010年 1月17日(日)17時01分28秒
編集済
  ゆきは
舞い堕ちる瞬間から
重なることを 知っています

冬枯れた
地上のノートブックに訪れて
色褪せたことばに よりそい
白いガーゼで 塗りかえます

ゆきは
舞い堕ちる瞬間から
手離すことを 知っています

忘れたいことの
ひとつやふたつに 降りつもり
氷雨に 身をゆだね
とうめいに 色彩を濡らします

ゆきは
舞い堕ちる瞬間から
失うことを 知っています





☆まどろむ海月さんへ

 ずいずいずっころばし、ありがとうございました。
わらべ唄から、イメージをひろげての創作は困難だったと思います。
わたしは、かごめかごめ、をまとめるときに、とても苦労しました。
かごめ かごめ のイメージから、更に自分のオリジナリティを出さなければ
ならないですね。
 ずいずいずっころばし、素敵に仕上げられ、さすが、だなあと思いました。

 まどろむ海月さんのように、美しい作品が描きたいのですが、まだまだ未熟で、
勉強中です。

 雪化粧、ありがとうございました。
 
    (海月) 「とっぴんしゃん」は、詩としては恥ずかしい出来で、無理やりわらべ唄を題材にして何とかという作品なので、ごめんなさい。努力はしたということをお伝えしたかっただけみたいです。
「雪化粧」、難しい言葉もなく素直な表現なのに、深い。すばらしいです。以下を返詩に。

  「現象学的還元」





  Ⅰ 世界は 魔法に満ち充ちて 不思議


赤 が
赤く見えること
青 が
青く見えること
それが不思議
だから それは魔法


花が 雪が
光のきらめきが
夕焼けが
美しく見えること
それが不思議
だから それは魔法


陽だまりが
そよ風が
せせらぎが
鳥たちのさえずりが
まどろみが
気持ちよく感じられて
それが不思議
だから それは魔法


世界は
魔法に満ち充ちて 不思議
生の日々は 疑いもなく
偉大な魔法によって
支えられている





  Ⅱ 還元


生は それ自体

幸せの 装置 なのです



ありきたり も

けっして ありきたり ではなく





         .
 

… 一番星見つけた …

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 1月 4日(月)23時25分17秒
編集済
                                             .


雲の崖から
流れ落ちる虹

光は水に沈み
黄昏の彼方に
風は失われた
日々を呼ぶ


夜の匂いの中
思い出は座礁し
波のはかない仕草に
古い傷は火口(ほくち)を開く


指に点された灯は
静かにこぼれ落ち
闇の彼方の
底なしに深い炎と
結ばれる


燃え上がる夜の霧
土の下の流れに
流木はさまよい
身から広がる波紋に
朝のまどろみが忍び寄る





 幾度の冬の旅を
 少年よ
 きみのリュックは
 すっかり古びた

 値しない自分の小ささを嘆いても
 思いの深さと比例して
 星は遠ざかるばかり

 黄昏に
 足下の水たまりを
 覗いてごらん
 ほら
 君を見守り続けた一番星は
 手の届くところに





                                 .
 
    (海月) りらさんに。返詩です。超多忙の日々が始まる前に、頑張りました。わらべ歌を手掛かりに返詩しようと悩んだのですが、「一番星み~つけた」に関連することしか思い浮かんで来なくって、こんな詩になってしまいました。悪しからず。  

ゆびきり

 投稿者:りらメール  投稿日:2010年 1月 3日(日)18時58分4秒
  いちばん
ちいさな
かよわい
ゆびを
むすびあう

ゆびきり
げんまん

うそ ついたら
はり せんぼん

せんぼんの はりの
はてしない きょりを
いちばん みじかな
こゆびと こゆびで
むすびあっていた

たよりなく
とうめいな
ふたしかな
ひとしずくの
やくそく

ゆびきり
げんまん
うそ ついたら
はり せんぼん

ゆび きった

ふたたび
あうために
ゆびと ゆびを
ほどきあう

またね、と
みえなくなるまで
ふりかえり
てを ふっていた
わかれぎわ

はなればなれの すきまに
ひとりぼっちの
じかんを たばねて
てのひらに うかべ
まっている
となりに いたこと
つかのま ふれていた
みずたまの きおく

くものいとで
つむいだ ぬくもりを
ゆびさきだけが
おぼえていた

ゆびきり
げんまん
 
    (海月) 違う場所でのご投稿八作品を読ませていただいて、この作が二番目に好きな作品でした。ありがとうございました。



 「わらしべよ」

     まどろむ海月




あなたの
指の隙間から
こぼれ落ちる

哀しみを拾い集め
風の自転車は
秋を走る



淋しさは旅立った
淋しさは空の彼方
だからあんなに
高く 蒼い



影が伸び
子供は追いかけるが
闇の深さにたじろいでしまう



こぼれおち
みむきもされず
ふかれとばされ
ながれをただよい



迷えるものの
はかなさも
月の優しさも
さざなみは知らず
つぶやきに閉じこもる



繰り返し繰り返し
わらしべよ
わらべ歌をお歌い

いつか きっと
黄昏の謎が
君を導く

いつか きっと
星空へ あの



星空へ





2006年 9月30日初出
 

かごめ かごめ

 投稿者:りらメール  投稿日:2010年 1月 3日(日)18時54分16秒
  かごめ かごめ

つながれた手の輪が
閉じこめられた かごになる
みえない瞳の鳥が うづくまる
かぶりつづける てのひらのお面
うつぶせた顔が 輪にしずむ
きのうの白は あしたの黒
だれかがひとり 鬼になる

かごの中の鳥は
いついつ出やる

夜明けの晩に
たそがれる月影に
さまよいながら
よいやみの朝を
さがしはて
あかつきの光は
くたびれて
さじを投げた
時の暮れ

何千年 生きていても
何万年 生きていても
すべってころぶ 鶴と亀
繕ういのちは ひとめぐり
ふたたび ころび
すべって出逢う 鶴と亀

なかよしこよしの 輪の中に
落っこちている 落とし穴
つぎの鬼は だれかと
びしょ濡れの ざしき童子が
ふりむいた

うしろの正面 だあれ?
 
    (海月) リラさん、初投稿ありがとうございました。違う場所で、違うペンネームで、出会ったこの詩は、最近最も気に入った少ない詩のひとつでした。
「桜散りぬる」「かげ行」「ながるる」「黄昏アラベスク」あたりのどれかを改訂して、返詩にしようかとも思いましたが、なんとか新作を試みてみようと思いますので、どうか気長にお待ちくださいますように。

以下は新作ですが

  「とっぴんしゃん」



ずいずいずっころばし
橋の上
転げるように逃げていく

茶壷の魔物は
ゴマ味噌まみれ
しがらみ から神 かみついて
愛し 憎し の境なく
どこが けつやら あたまやら
吾やら 汝れやら わかりゃせぬ


抜けたら どん何処しょ

抜けたら どん何処しょ


河原に 木枯らし 石の数
茶壷の 思い出 数知れず

吾は鼠か 米食ってチュウ
ちゅう 中 宙


父母 呼んでも
術もなし
欠けた茶碗は戻りゃせぬ

イドのほとりで結ばれた
絆の道を帰ってく
 

瑠璃色の彼方へ

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 1月 2日(土)12時27分8秒
編集済
                       .





夢の少女は
天上から
瑠璃色の彼方へ
旅立った



 小さなリュックには
 思い出の星屑と
 どんなお守りが?



君の未来は
すべてが不分明で
祈らずにはいられない

足下に流れる
透明な波に





                         ・
 
    (海月) あけましておめでとうございます。私たちの歩みが、いつも清らかでありますように…  

白い虹の風景

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2010年 1月 2日(土)11時57分17秒
編集済
                                           .


エーテルの
波がそよぐ
白い虹の空



現実が夢になった
天上の島のはるかな 時 を
少女は遊んでいるが



夢が現実になった
幸せに安らぐ
風の視線を
知らない





                  .
 

そうか・・・(改訂版)

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2009年12月 6日(日)02時45分17秒
編集済
                                         、




青空に透けて

行ってしまった

面影はみんな




 浜辺の足跡
  海鳥が鳴いていたね

 霧のベンチ
  スカーフのように触れた

 風のブランコ
  揺らぎあって




  手のひらの林檎も
  林も 街も 路も
  ああ もうこんなに
  透けていく





  石蹴り
  縄跳び
  かくれんぼ
  鬼はど~こだ
  オニは 畠のむこう
  おには
  とぼとぼと




そんなにもやさしい
水よ 雲よ
だけど鳥は
行方をしらない





   きのう夢を見たよ
   こわかったよ
   きみがいなくなって
   それで…





   そうか
   もう秋は
   終わったのか





   あ

   いや
   雪降り虫

   だったか





   こんど…





       (「そうか」2006’8/22初出)
 

夜の頁

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2009年 9月 5日(土)18時00分42秒
編集済
                  .





星空から
あなたは振り返る

貴女はふりかえる
ともしびに重なる微笑み
細い指先




星座へと続く階梯は
途絶えたまま
この小雨のように
降りしきるものは
何なのか




白い小径の途上で
かさねた出逢い
かわされた言葉
真紅の花吹雪


触れることもなかった
あなたの唇の感触が
苦しい





繰り返される
すみれ色の夜明け
黄昏の悲しみ
星空の訪れ


頁のように
過ぎていっても

動くこともできない
自分がいる





 

タイヤ樹と春

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2009年 3月15日(日)19時41分5秒
編集済
                       .


淡い緑の中で
逆三角形の水色が
樹を見上げると
サクラではなく
古タイヤがいっぱい
なっているのだった

柔らかなまるいピンクが
身体を歪ませながら
通りかかったので
あれはどうしたことかと聞くと
ああ あれね
平和憲法のおかげで
働き者の国民が一億総中流の社会を作り上げたのに
君が代好きの右翼が 戦前の天皇制を美化し
教育基本法を強行採決で改悪し
格差社会まで復活させたけど
選挙で大敗確実となり
あの樹もやっとまともな春がきそうだと喜んでいたのよ
ところがまた雲いきが怪しくなってきたものだから
すっかりふてくされて狂い咲きした結果があれなのよ
アンタがそんなにサクラんしてどうすんのよ
って言ってあげたんだけどね もうすっかり
キがちがっちゃったみたいね
ねえ そんなことより 私たち二人で
もっと春めいたことしてみない
なんて 身体をすり寄せて言われてもなあ と
逆三角形は すっかり青くなって きょろきょろしている
まるいのも言ったそばから全身赤くなってうつむいている




青が 赤の体内に 精を放つと
紫色の星や花がいっぱい出来て
明け方の空に流れ出した




雲の白い起伏は
幸せだったあの頃に似ている



あまく温かいものを身体に入れても
想いはまともにならない

『春は残酷な季節 … 』




鳥はさえずりながら飛び立ったが

閉ざされた抽象の扉の向こうには

泣き崩れた具象の日々が




             .
 
    (海月) ずいぶん遅れてしまいましたが、海狸さんへの返詩です。難題でしたが、この春、私がタイ焼きを食べながら思いつくのはこれぐらいなので、ごめんなさい。気に入っていただけたら幸いです。
ご投稿のおかげで何とか詩作を続けることができています。ありがとうございました。
 

たいやき

 投稿者:海狸  投稿日:2009年 1月30日(金)19時42分0秒
  縁日でたいやきを
買ってもらった

そして
迷子になった

押し寄せるのは
感情か
人の波か

あたしは咄嗟に
たいやきをまるごと
口に押し込んだ

無理だった
口からはみだして
喉がつまった

吐き出すことも
飲み込むことも
できなかった

こみあげてきたのは
感情か
たいやきか



お巡りさんが
あたしを保護した時

あたしは
あんこまみれで
泣いていたらしい


で、結局
そのたいやきは
どうなったっけ?

記憶にない



母は今だに
たいやきを見ると
この事件を
思い出すらしい


あたしはあれ以来
たいやきが
トラウマに…
なーんてことは
全くなく

たいやきは
つぶあんにかぎるね
とか言いながら
三個くらいなら
食べられる



海月さん、お久しぶりです。
↓海月ワールドですねぇ~~。
たいやきは今となっては笑い話です。
迷子になるのが得意な子供でした。

海月さんが一体どういう風に返詩をしてくださるか興味津々です。
たいやき、使うかな?とか  笑。

気長にお待ちしますので返詩をしていただけたら嬉しいです。
 
    (海月) 海狸さん、ご投稿ありがとうございます、すごく嬉しいです。今の状況を考えると、返詩は1月後でしょう(ごめん)。どうか本当に気長に気長にお待ちくださいますように。  

夜と私

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2009年 1月17日(土)23時22分44秒
編集済
                                           .




夜がやって来た

挨拶がわりに
手元にあったまたたびをさしだすと
なんと 長い舌を出して べろっとなめ取った

裏返しになってよだれを流し
でろでろになったところを見ると
どうやら 夜は 猫科らしいのが知れた

しきりに もっとくれろと せがむので
そんなにだらしなく酔っぱらわれては 二度とあげられない
明晩 きちんと出直して来たら 少しだけなめさせてあげよう
と言ったら よたよたしながらひっこんで行った


翌晩 夜は 綺麗な黒猫の姿でやって来た
またたびをなめさせると ごろごろと気持ちよさそうに
身体をなすりつけてくるので しばらく撫でてやっていたら
やがて満足したのか ゆらゆらと 窓辺から姿を消した


夜はいったい何処で寝るのだろう
いや そもそも昼間は何をして 何を食べているのか
いろんなことが気になって 毎晩来るたびに聞いてみるのだが
夜は人間ではないし 僕ときたら 猫語でさえわからないものだから
疑問は増えるばっかしだった


つい おまえこんなに僕を悩ますばかりで いいと思っているのかと 責めたら
次からは 夜が去った窓辺に 頭の無い蛙や蜥蜴などが 置いてあるようになった
夜は意外に律儀な奴なのだった

こんなことが続くのが 我慢できなくなって
ちっとも嬉しくなんかないや それよりおまえの恋人でも見せてくれたらどうだい
なんて また きついことを言ってしまったものだ

夜は 黙ってしまい 恨めしそうな顔をすると
いきなり 突っ伏してしまった
そして うっう おっお と 声を抑えて
嗚咽(おえつ)しているのだった
えらいことになってしまったなあ と
驚くばかりで 慰めかねていると

いきなりあたりがまぶしい光に包まれて
その中に 一りんの白百合が咲いている風景が見えた
まばゆい光が凝縮していくと それは白い梟の姿になって
夜空に消えていった
夜も哀しみの 感情を湛えたまま 姿を消した

そうか あの夜の恋人は あるまばゆい朝 だったのか


あの夜は もう 二度とは帰って来なかった


夜にだってプライバシーはあるのだから
あんなことは聞いてはいけなかったのだ
夜は心が痛くて 毎晩僕のところに来ていたのだ
それが 今は切ないほどわかる



 遠い日のオパール色の憧れ
 あの白梟は 私の妖精に
 不思議に似ていた





                                                05年10月初出   
 

あの頃の子供

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2009年 1月11日(日)17時44分50秒
編集済
                                     .

  Ⅰ あの頃が来た


扉を開けると
土砂降りの雨の中に
あの頃が立っていた

あの頃とは違って見えたが
私には直感ですぐに解ったのだった

成熟した女性の姿のあの頃は
招き入れると ずぶ濡れのまま
私の胸に倒れこんできた

何枚ものバスタオル 熱い風呂
まっさらのシーツ まあとにかく今
あの頃は私のベットで寝ているのだった

あの頃は人間で女性だったんだ と言うと
人間じゃなかったけど 女性ではあったのよ
と答えて 寝てしまったのだった

どぎまぎしてしまうほど美しい身体をしているのに
あどけないほど安心しきった顔で寝入っているのはどうしたことだろう
ベッドの周りをぐるぐる回りながら あの頃のことばかり考えて暮らしていた日々に
どうして戻ってきてくれなかったんだよ なんで今更 等々とわめきたくもあったけど
結局 足音をしのばせて何度も 綺麗な寝顔に魅入るばかりであったのだった

目を覚ます気配もないまま 深夜になった
いろんなことを考えすぎて もう頭はごちゃごちゃだった
眠いし 寝るとこないし 添い寝しちゃうもんね
返事がないから 入っちゃった
肩を抱くと柔らかいし 髪は好い匂いがするし
おいおい あの頃に欲情するなんて 相当の変態じゃないのかなあ
窮鳥懐に入れば何とかかんとかとも言うしなア
煩悩やら理性はどうしたやら良心の呵責やらなんやら
あの頃の産む子供は今頃の子供になるんだろうか等
お馬鹿な頭はますます混乱が窮まり 疲れてちょっと瞑想と目をつぶったら
不覚にもそのまま 気持ちよく寝入ってしまった

あの頃の夢は バラ色だったり七色だったり
チョー幸せなものでありました

先に目を覚ましたのは私
肩を抱かれたまま健やかにまどろんでいるあの頃
もう嬉しくて思わずカーテンをあけると
朝の光の中に溶けこむように
消えていった

すっかり落ちこんだ数日が過ぎると
不思議に幸せな日々がやってきた
どうやら心の中に
あの頃の子供を宿したのは
私のほうであったらしい





                                          (05年11月、初出)





  Ⅱ あの頃の子供


 『子供だったあの頃は
  あの頃の子供にきっとそっくりだったのだ、というか、
  いや…』


あの頃の子供は、近ごろの子供とはずいぶん違っていた。
産んだ僕が男なんだから、ま、当たり前か。
朝、やたら唇をなめてくるやつがいるので、よせやいと目を開けると、
平らになった腹の上にちょこんと座ってこちらを見ている
小さな女の子が、あの頃の子供だった。

どうせ幻覚だろうし、かまっていたら遅刻しちゃうし、さっさと朝の支度を済ませて
朝ごはんを食べていると、背中からよじ登って僕の首や頭に抱きついて遊ぶのだ。
可愛いので何か食べさせようとしても、一向にほしがる気配がない。
休んで一日付き合うかと一瞬切なく思ったのだが、
今日は大事なクライアントと外せない約束があるので、絶対に休めない日なのだ。
食べられそうなシリアルとかミルクの皿をテーブルに並べて、
おとなしくしておいでと言い聞かせて家を出た。

鍵をかけて小走りに駅に向かったのだが、
いつの間にか手をつないでついてきているではないか。
しょうがないので一緒に電車に乗ってしまったのだが、
明らかに他の誰にも見えていないようだ。
電車の中でも、僕の頭や首に抱きついてご機嫌に遊んでいる。

職場ではメタボな腹が急にすっきりしたので不思議がられたけど、
やはり誰にもあの頃の子供は見えないようだ。
こういうことを正直に周りに話す人がたまにいるみたいだけど、
僕は賢いので絶対に話さない。病院送りなんてとんでもない。
ところがクライアントにあった途端、姿を消した。
驚いたり探したりする余裕はないから、何事もなかったように対する。
(するとやっぱり幻覚だったのかなあ?)

超多忙な一日を終えて帰宅の途について急に気になってきたけど、
きょろきょろして挙動不審者に思われるのもまずい。

どきどきして玄関の扉を開けたが、いるはずはない。
ところが、庭のほうで気配がするので、あわてて覗いてみたら
バッタを追っかけているではないか。捕まえたのでやばいと思い、
「おいやめろ!」と声をかけたが、すっかり野生になったきらきらする目で、
こちらを見てずるそうににやっと笑って、とめるまもなく口に放り込んでしまった。
あわてて口をこじ開けようとしたら、もがいて引っ掻いたあげく、
ゴクンと飲み込んでしまった。どうしよう、医者に連れていくか、と思ったが、
こちらのほうの異常が疑われるにきまっているので、様子を見ることにした。

翌日からの3連休、結局何事もなく、いたって元気で戯れてくる。ゴキブリなんか食べると
やばいな、と思っていたのだが、それはなく、コオロギとかほかの昆虫も食べない。
精霊バッタしか食べないし、明け方の草の露しか飲まないようだ。
そのうちおなかを壊すから、頼むからやめてくれよ、と言ったら、
何とかシリアルだけは食べるようになってくれた。(メーカーは例のマークがついたやつ)

初めは首の上で寝ていたが、大きくなって今は胸の上で眠る。
朝は目覚ましみたいに、唇をなめて起こしてくれる。
トイレに入っても、風呂に入っても、ドアの前でちょこんと座って出てくるのを待っている。
誘っても風呂は嫌いみたいで絶対に入らないが、ちっとも汚れないし
薔薇の蕾の匂いしかしないので、そのままにしている。
風呂上りのゆであがった足が大好きで、なめたり抱きついたりするので、
「おいやめろよ」と言うと、噛んだりしてくる。
テレビや音楽に熱中していると棚の上のモノをわざと落とすし、
読んでいる本や新聞の上に座って妨害するし、長電話なんてとてもできない。
ひどく機嫌を悪くしてものをぶつけてくるのだ。



半年も一緒に生活していたら、なんかすっかり少女らしくなって、
白いフレアーのワンピースしか着ないけど、ほっそりとしてよく似合っている。
ふるまいも少しよそよそしくなった気がするが、まあ、これが成長ということだろう。
ふと
 『子供だったあの頃は
  あの頃の子供にきっとそっくりだったのだ、というか、
  いや、ひょっとして、あの頃そのものなのかもしれない じゃないのか…』
と、思ったとたん、こちらをちらっと向いて、さみしそうに笑ったと思ったら、
みるみる大きくなって、なつかしいあの頃の姿になって、その一瞬に消えていった…

ああいやだ、また置いておかないでくれ、と泣き叫んだが、
もう取り戻しようがないのは、わかっていて、一日中、涙が止まらなくなって


あの頃は あんなふうに戻ってくるんだ
子供だったあの頃を見せたくて
あの頃の子供 いや
子供だったあの頃さえ失ってしまった僕は
いったい何がいけなくて と思うと 訳がわからなくて
休みのたびに 一日考え続けて涙がとまらず
泣き疲れて眠ってしまうと
翌朝は不思議にすっかりすっきりして
意外に元気よく
職場へ向かえるのだった





                              .
 
    (海月) 久しぶりですが、正月休みとこの3連休で少し充填できたのか、めずらしく2つも書けました。Ⅱが、05年11月初出のⅠの続きとなる、新作ですが、続けて読んでいただきたいので、並べて載せました。
ちと長くて申し訳ありませんが、お楽しみください。書きたかった作風の作品です。
 

混濁する青

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2009年 1月10日(土)20時33分47秒
編集済
                        .





寒さよりもしみとおる孤独に
大地は沈黙している

屹立する枯れた木は
信じる力を失い
他人の顔をした
春の訪れを恐れている

蟻の巣は崩壊し
土竜(もぐら)は朝 死んだ

死の眼前に水たまりは
虚ろな青を映している



 凍える風は吹いても
 雪さえ降らない
 荒涼とした季節

 君の気配が感じられない
 初めての冬



 蒼い翳りが空から降りてきて
 振り返った君は
 さみしそうにほほ笑む
 そんな妄想だけが
 微かに暖かい




 青も白と灰に
 混濁してきた





.
 
    (海月) 久遠 泉さん、青山テルマを思わせる優しい詩のご投稿、ありがとうございます。

競争社会の歯車であることを強いられるような多忙さの中で、自分らしさの多様性もますます枯渇して、残っているのは鬱の中の自分だけみたいで、これと向き合うのがまた辛くてと、なかなか書けません。

モンドリアンが好きなのですが、空の青さの象徴性を高めて抽象化することが、少しはできたでしょうか
 

あなたのそばにいるからね

 投稿者:久遠 泉  投稿日:2008年11月28日(金)19時32分15秒
  あなたの心が疲れているのなら
私は そっと 癒してあげたい

あなたの心が悲しいのなら
私は そっと 救ってあげたい


私は こうして あなたのそばにいる
そう こうして 音楽とともに

何で そんなに 疲れたの?

何で そんなに 悲しいの?


私は こうして あなたのそばにいる
そう こうして 音楽とともに


あなたの心が 戻るまで



私は あなたのそばにいるからね

素敵な詩のHPを持っていらっしゃるのですね。
驚きました。
詩を書かれるなんて、素敵ですね!

http://hwm8.gyao.ne.jp/super-cat-world/

 

薔薇夢跡

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2008年11月 3日(月)22時15分3秒
編集済
                      .


  Ⅰ 薔薇中毒



愛しい薔薇の
深紅の花びらが
狂おしく息もつけぬほど
降りそそいだ
あの頃

 夜毎の夢の中でさえ
 貴女の馨りは
 深く ふかく
 私を酔わせたのでした




気づいてみれば
私は薔薇中毒

 貴女の気配が
 感じられない日々
 心が引き裂かれるほど
 禁断症状に悩んで





  Ⅱ 発条仕掛けの夢


高い空から
海辺の工場に
舞い降りる私


 廃屋の
 錆びた鉄扉に
 射しこむ斜光


双子の影の源に立つのは
発条仕掛けの悲しい自動人形

 垂れこめた暗雲のように
 壊れた機械音が響いてくる


燐寸を落とせば
水は燃え
身をよじる黒煙
炎の舌先は
艶やかな死を求めている

 風の視線に
 置き去りにされた
 ドライフラワー

汚れた地面に散らばる
ほころびた言葉

 時計仕掛けの渦
 未明の鱗光


口にふくむ
途切れた想い出
空洞を飲んでいる月の顔




鋭い哀しみの声に
軋む目を開いた私は
禁断の記憶の扉に歩んでいく
ゆっくりと





  Ⅲ 薔薇の部屋


背の高い扉に刻まれた
細い植物線模様の
一つ一つを
しばらくたどって
やがて私は
内側に開く



薔薇の嵐が吹き荒れて
深紅の花びらが
狂おしいほど
降りそそいだ
あの頃のままに
その部屋はある



私を薔薇中毒にした
貴女が去り
ながい禁断症状から
立ち上がって
封印した部屋



整理もつかぬまま
厚く散り積もった
深紅の花弁に乱されて
強い馨りの愛しさは
今も私を苦しませるんだね




背中で扉を閉める
 まぶたの裏に浮かぶ
 球面の文字盤には
 蜘蛛の巣のように
 取り戻せぬ距離と
 時の轍が示されている





部屋は再び封印された
 私よ
 私よ
 多忙な日常の旅へ
 帰ろう
 帰ろうよ





                  .
 

花の夢跡

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2008年11月 3日(月)15時34分54秒
編集済
                                     .


   Ⅰ 発条仕掛けの夢


高い空から
海辺の工場に
舞い降りる私


 廃屋の
 錆びた鉄扉に
 射しこむ斜光


双子の影の源に立つのは
発条仕掛けの悲しい自動人形

 垂れこめた暗雲のように
 壊れた機械音が響いてくる


燐寸を落とせば
水は燃え
身をよじる黒煙
炎の舌先は
艶やかな死を求めている

 風の視線に
 置き去りにされた造花

汚れた地面に散らばる
ほころびた言葉

 時計仕掛けの渦
 未明の鱗光


口にふくむ
途切れた想い出
空洞を飲んでいる月の顔




鋭い哀しみの声に
軋む目を開いた私は
禁断の記憶の扉に歩んでいく
ゆっくりと





  Ⅱ 薔薇の部屋


黒檀に刻まれた
細い植物線模様の
一つ一つを
しばらくたどって
やがて私は
背の高い扉を開く



薔薇の嵐が吹き荒れて
深紅の花びらが
狂おしく息もつけぬほど
降りそそいだ
あの頃のままに
その部屋はある



 夜毎の夢の中でさえ
 貴女の馨りは
 深く私を酔わせ
 薔薇中毒にした


 貴女が去り
 ながい禁断症状から
 立ち上がって
 封印した



整理もつかぬまま
深紅の花弁は散り乱れ
強い馨りの愛しさは
今も私を苦しませるんだね




背中で扉を閉める
 まぶたの裏に浮かぶ
 球面の文字盤には
 蜘蛛の巣のように
 取り戻せぬ距離と
 時の轍が示されている





部屋は再び封印された
 私よ
 私よ
 多忙な日常の旅へ
 帰ろう





  Ⅲ 花の囁き


蕾の温度の
あなたの愛


花びらを
散らすように
こぼれる

紅の 白の 黄の 紫の
言葉 透明の雫


あの日
雨の中を
歩き続けた
私のとまどい


羽のような謎
風の 波の 影の 感触

夜空に浮かび
朝にきらめき
旅先の青空にさえ
流れていきます



                                           .
 

花の囁き

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2008年11月 1日(土)20時29分30秒
編集済
                                        .


蕾の温度の
貴女の愛



花びらを
散らすように
こぼれる

紅の 白の 黄の 紫の
言葉 透明の雫



 あの日
 雨の中を
 歩き続けた
 私のとまどい



羽のような謎
風の 波の 影の 感触




夜空に浮かび
朝にきらめき
旅先の青空にさえ
流れていきます





                                           .
 
    (海月) 海狸さん、ご投稿ありがとうございました。あきれるほど長い時間がかかりましたが、何とか返詩らしきものが書けました。
超多忙、というだけでなく、詩と向き合う気持ちがなかなか出てこない心の状態なのです。
心機一転したくもあるのですが。
 

アマリリス 三首【恋歌バージョン】

 投稿者:海狸  投稿日:2008年 9月 4日(木)01時44分18秒
  アマリリス
女心は
赤く咲く
眠い眼こする
君を引き止め


長雨に
ほろり花びら
アマリリス
足りぬ想いで
おやすみなさい


とっておきの
つぼみは胸の
中にある
君の温度で
咲くアマリリス



海月さん、返詩ありがとうございます。
最近は海月さんのおっしゃることが(辞書を引きながらだったりしますけど)理解できるようになりました  笑。

海狸は日常の私の根っこの部分であり、理想でもあります。
 

世界の果ての汀(みぎわ)で

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2008年 8月14日(木)00時57分10秒
編集済
                          .



青い闇の水をたどって
近づいてくる
紅斑のある
白い身体

永く向き合ったまま
微かに身体を
揺らす貴女



 どうかこのまま…

 幸せすぎる緊張感に
 堪えかねたわけではないのです



指先から散らした
透明な碧の薄片は
あなたに触れただろうか
言葉のかわりに
貴女に 私は



この世界の果ての汀で
出逢う二人の魂
佇む木と錦鯉





有明の月
みなもを渡る
暁の霧
そして
あけぼのの
気配に
身をくねらせ
去ってゆく貴女

 さめてゆく
 夢のように





  午前の散歩でね
  雲間を飛ぶ
  鳥を見たよ

  あんなに高い
  空を





               .
 
    (海月) 返詩です。海狸さん、ありがとう。おかげさまで、久しぶりに詩が書けました。
夢は、かなわぬ現実の代償だったりするとも言いますが、深い夢を見ることさえ叶わぬ慌ただしい日々の中で、詩は 最も愛しい時空をたどる夢の 代償であり、「まどろむ海月」はそのための装置なのでした。
夢の代償行為ゆえに、日常の何気ない瑣事にひそむ深さが見えたりします。
 

君想ふゆえに悲しけれ

 投稿者:海狸  投稿日:2008年 8月10日(日)06時53分0秒
  この世の果てで
詠む歌は

謎が謎よぶ
いろはうた

幸せかいと
訪ねれば

こたえは風に
掻き消され

朧な影が
重なれば

月は闇夜に
喰らわれる

最後に残る
偽りの

希望を掴む
たなごころ

神に嵌められ
開けし時

君想ふゆえに
哀しけれ



海月さん、相変わらずご多忙でしょうか?
夏バテしてませんか?
 
    (海月) 海狸さん、お久しぶりです。ご投稿ありがとうございます。う~ん、もう本質的にばててしまってまるで書けそうにないなあ、と思っていましたが、考えてみたらこれまでも投稿された方に後押しされるように書いていたにすぎない私であったと思います。誰かの呼びかける声が聞こえないと、どこまでもどこまでも堕ちていくような性向らしいんですね。
(せっかく http://community.teacup.com/poem/? で、2年以上4位以内を保っていて、評価・注目してくださっている向きもあるようだと思いつつ、つい最近5位に落ちましたが、海狸さんのご投稿一発で元に戻ったようで、感謝いたしております。まあ頑張りなさいという評価なのだろうと思います。)
この際、新境地が開けるまでこのままでもいいかなんて思いつつもありましたが、とにかく数日中に返詩してみますので、今少しお待ちください。それにしてもすごい数の投稿が集中していた時期もあったこの掲示板ですが、なぜか本当に閑寂な場になってしまいました。願わくば、このまましばらくここでのお付き合い、今後ともよろしくお願いいたします。
 

青の夢路

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2008年 5月23日(金)13時59分55秒
編集済
  .


青い夜道

降りしきるものに
真紅がまじり

花片を踏みしめ近づく
白い脚先


冷たい絹に包まれた
やわらかな しなやかな
抱きしめても届かない身体

せめて髪に顔をうずめても
強い薔薇の香りに
動悸は鎮まらない


こんなに愛しいのに

怖れてしまうのはなぜ


 夢の扉を
 もう一枚開けると
 見える光景に
 静かに横たわっている



 霧のように私は近づく





 あのころ
 あんなに未熟だったね



  わたしの唇が
  あなたの胸の間をたどり
  それから
  もっと深い谷を
  歩んだとき
  名前を呼んだのは
  あなたでしたか
  わたしでしたか





                             .
 
    (海月) 海狸さん、ご投稿ありがとうございました。返詩という感じではありませんが、おかげさまで久しぶりに詩が書けました。  

片恋 五首

 投稿者:海狸  投稿日:2008年 5月19日(月)01時21分23秒
  恋心
理由(わけ)はいらぬと
言いつつも
どうして好きに
なったのでしょう?


近づけば
きっと君のこと
好きになる
出逢った頃から
わかっていたんだ


恋恋と
相合い傘に
君の名を
こっそり書いて
またすぐ消した


もの言わぬ
君は優しい
ずるい人
少し疲れた
片恋の日々


君のこと
あきらめ泣いた
次の日の
空の青さは
底抜けの青


またまた短歌です。すみません。
拙い歌ではありますが、久しぶりの恋歌です。
 

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2008年 5月18日(日)16時06分46秒
編集済
  .



かなわぬ憧れから
金色に降りしきる痛み

消えない
てのひらの
想いは淡く
翠に透きとおり

五月の風に流れ
あの雲のように

あなたの空へ
彷徨うだろうか





 今夜は
 銀河の海を
 ゆったりと泳ぐ
 白鯨の夢を
 見たい





.
 

丹後へかかる虹

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2008年 5月 2日(金)14時21分57秒
編集済
  小式部内侍、

大江山いくのの道の遠ければまだふみもみず天の橋立

と詠みかけけるを、定頼中納言返歌にも及ばず逃げられけるが、卿に代わりて詠める



 ふみみずも 大江生野の空を越え 思ひ彩る 天の橋立

 ふみみずも にじむ思ひにさえ渡り あめを彩る 空の橋立


 「心も才(さえ)も、思いのほか深ければ・・・」





.
 

桜散りぬる

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2008年 4月12日(土)23時51分19秒
編集済
                    .


色はにほへど
はらはらと

うゐの奥山
かなしみの

惑ひの細道
たどれども

古里さむく
風まじり

夢の通い路
ほろほろと

散りぬる淋しさ
雨まじり

わが世 誰ぞ
愛しかる

夢路の奥のその奥の
常にはあらぬ恋なれど

しのぶ軒端に
ふるふると

愛しき人の残り香の
ゑひて痛みを抱きしむる




 追へどはかなき

 面影 ひとひら

 けふこえて


 春のひかりを惜しみつつ

 あはれながれて桜

 流るる桜




 桜散りぬる





                              .
 
    (海月) 海狸さん、お久しぶりです。ご投稿有り難うございました。遅れましたが、返詩です。過労死するかと思うほど多忙です。やっと一日休日。  

桜の花が散る頃に

 投稿者:海狸  投稿日:2008年 4月 5日(土)23時36分25秒
  桜の花が散る頃に
生命の不思議を
思うのは
私のクセか因縁か


散る花びらよ
髪に胸に降り積もれ
抱きしめたまま
離さないから


散る花びらよ
頬に肩に降り積もれ
抱きしめたまま
離さないから



こんなにこんなに
痩せてしまっても
『生きたい』と
一途な瞳で願うのだ



風に
揺れる灯火
舞う桜花


嘆くな泣くな
お前は強い



抱えきれない胸の内
零しながらも
笑う君
私に何ができるだろ



海月さん、お久ぶりです。先日、桜吹雪を見ました。ほんとうに綺麗でしたよ。そこでこんな詩みたいのができました  笑。
 

転載します

 投稿者:K  投稿日:2008年 3月29日(土)20時25分11秒
  ★黙っていたら2年後には戦争国家★

☆そろそろ本気で戦争に反対しませんか☆


◆私たちの生きる権利は守られていますか?
・毎年三万人が自殺しています。原因の三割が生活苦です。
・年収二〇〇万円以下の貧困層が四人に一人(一千万人)に拡大しています。

◆日本は平和ですか?
・四兆八000億円の防衛費はほんとうに国民の安全に役立っていますか?
・在日米軍の駐留と思いやり予算二千億円をいつまで続けるのですか?

◆私たち主権者の意思が政治に反映されていますか?
・過去に二百十九億円もの税金を使ったインド洋での給油活動再開は私たちの意思ですか?


・自民党の新憲法草案は、自衛隊を軍隊にして米軍と一体となって世界中で戦争ができる日本をめざしています。
・憲法改定を問う国民投票法は二年後に施行されます。
・もし日本国憲法に九条がなかったとしたら、私たちは、朝鮮戦争で、ベトナム戦争で、イラク戦争で多くの人を殺し殺されたことでしょう


あなたも憲法九条改定を止めさせる意見広告に加わりませんか。
憲法記念日(五月三日)にあなたの名前の載った意見広告を新聞に掲載します。

私たちも賛同します。
 永六輔・斎藤貴男・加藤登紀子・他賛同者三〇〇〇名(二月一日現在)


これはいかなる政党・政治団体・宗教団体にも属さない市民の運動です。
詳しい資料のご請求は
市民意見広告運動事務局
Tel/Fax: 03-3423-0185
Mail: info@ikenkoukoku.jp
URL: http://ikenkoukoku.jp
〒151-0051
東京都渋谷区千駄ヶ谷4-29-12-305
 

夜の窓から

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2008年 3月27日(木)21時24分47秒
編集済
  .





夜の窓に遠く
過ぎる電車を
手のひらにのせる


人気の少ない座席に
ごとごとと震えながら
閉ざされたあなたの
かなしみは 何処へ行くの



私の身体は
透き通り 夜空に広がる


先回りをし 走る電車を
そっと包んでみるのだが
小さな窓を覗いてみるのだが


川面に映る電車の灯
揺れる走馬灯


おねむり おねむり
おおきすぎるものにも
きっと 気づくから





  また であったね
  おおきいのもいいけど
  僕らの身体は
  星空に透けて
  すかすかだよ


  梅の香が残っている
  桃も桜も咲きはじめた


  今夜は 獅子座のデネボラから
  乙女座のスピカを経て
  春の大曲線をたどりながら
  アークトゥルスの方へ
  向かってみないか



  おや
  きみの手は
  不思議に 温かい





.
 
    (海月) 06年3月の作品。この自作もすごく好きなのです。  

嵐は 春の…

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2008年 3月27日(木)21時00分57秒
                                                    .





激しい風もやんでしまえば
ほっこりほっこり 春の夜空

 過ぎ去ってから わかること
 あれはやはり春の嵐だったのか
 冬のルシフェルも 今はまどろみの中
 しばらくは 静かだろう



両性具有の御使いが
剣を収めて 微笑んで
銀に輝く粉撒けば
ああ 春の星座



さて狂乱の一幕物も 終ったようだし
春のピエロのおいらの出番
ひょっこりひょっこり
星の夜空で 綱渡り
空中ブランコ 宙返り


 あれは スピカで乙女座か
 アークトゥスは牛飼い座
 デネボラとレグルスは 獅子座かな
 白鳥と白ウサギ座は何処?


ほお~い ほお~い
だれか おきてはいないのかあ~



地上に 静かな湖は
今宵の星座を映してる


雲のような残雪も見えるが
漂う香りは梅の花
地の星のように咲いている


明日はきっと陽をあびて
土手の土筆も 顔を出すだろう





.
 
    (海月) 05'3/5初出の作品ですが、春の作品としては最も好きな自作の一つで、自身癒されるものがありまして
行間のとり方を変えてみました。
 

春のコラージュ

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2008年 3月14日(金)22時29分20秒
  .



通勤電車の空間の歪み

ポリバケツの中をワープしながら
流転する定めの憂鬱な朝


紺碧の地面に近づく
窓外の空気

遠くに小さく
斜めにさしこむ
白い雨の気分

蒼のカーテンは
返事をせず
透明にしゃがみ込んでいる

金色の光が
見えない程に遠のいて
人影は気がついている
何が起っているのか



流るる
流るる
流るる
焼きつく
はっきりわかる

光に包まれて
凡てを超える
しかし目の前に見える

狭くもなく
深くもなく
今この瞬間すら
揺れている




 ねえ
 春だよ
 春なんだよ
 見知らぬ駅で
 降りてもいいじゃないか
 ゆっくりゆっくり
 花の息を吸い込んでごらん
 そこに
 優しく撫でる水も
 まどろんでいるから





 子供が忘れた
 日向のあつさに
 雲を浮かべて
 はなしかける声は
 そよそよ吹いている





 星は

 まだ

 まだ見えない





.
 
    (海月) ちょうど1年前の作品ですが、再掲載したくなって  

以上は、新着順1番目から100番目までの記事です。 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  |  《前のページ |  次のページ》 
/11 


[PR] 電気自動車 収益物件